さて、役替わり全バージョンを観ることが叶いました。
それぞれの役替わりパターンの感想を、つらつら書いてみたいと思います。


A)芹香斗亜アルジャノン、城妃美伶セシリィ

2015年版と同じ組合せで、2016年版でも最も上演回数が多いパターン。
安定感に加え、役替わりの刺激を受けてか、進化して更にパワーアップ。
誰が観ても楽しめること請け合い。
特に芹香斗亜のアルジャノンはハマリ役。
おそらく歴代アルジーの中でも、イメージのハマり具合No. 1ではないかと。
過去の配役も、霧矢大夢さん、蘭寿さんなので、完成度は高かったはず。
キキジャノンは素に見える…という次元でハマってるので、比較できない…次元が異なるんですよね。


B)芹香斗亜アルジャノン、音くり寿セシリィ

「ハマり過ぎアルジャノン」
「リアル・小さなセシリィ」
キャラクターのイメージぴったりの「らしい」二人が組んだら、これはもう最強の組合せと言わざるを得ません。
キキジャノンを超える、のびのび妄想セシリィ。
登場人物と演者の年齢がまさにピタリ該当してるのも大きいのかな。
鳳月杏の執事役もあいまって、個人的に最高の配役バージョンだと思います。


C)鳳月杏アルジャノン、城妃美伶セシリィ

最もアダルトな組合せ。
貴族の品や落ち着き、雅やかな空気をまとった鳳月杏。
演技も歌唱も安定した城妃美伶。
予想よりずっと相性が良い組合せでした。


D)鳳月杏アルジャノン、音くり寿セシリィ

おそらく劇団的にはダークホースな組合せだったのでしょう。
発表時点から、観客サイドからは最も注目された組合せ。
最も上演回数が少なく、ぶっちぎりで需要が高い組合せ。
回数を増やす訳にいかない事情は推察できなくありません。
ですが、ビジネス・チャンスという視点では失策だったかもしれませんね。

鳳月杏と音くり寿の組合せは、予想を超えてときめきました。
体格差はもちろん、ちなジャノンとの年齢差も。
かたや、色気だだ漏れ青年貴族。
かたや、夢見る妄想乙女。
最初はバッキリ雰囲気が異なる組合せでした。

ところが、二人のデュエット『子どものように』が分岐点となりました。
鳳月杏の切ない歌声と、寄る辺のない幼な子のような表情。
それを受けとめる、音くり寿の慈愛あふれる歌声と表情。
本当に素晴らしくて……不覚にも涙が…。

その後、アルジーが「世界で一番可愛くて優しい女の子」とレディ・ブラックネルにセシリィを紹介するフレーズが生きてきます。
これ、最初の子供っぽいくらいのセシリィからの落差があったから、余計良かったのでしょう。
城妃美伶セシリィは歌唱も演技も遜色ありませんでした。
おそらく落差の威力ですね…。
音くり寿セシリィを泣きそうな顔でみつめる鳳月アルジーは、抱きしめたくなるほど愛しくて…。
幻想的で美しい…最高のアルジャノンとセシリィでした。


…さて。
ひつまぶし形式で、全部味わって、最後にもう一度、観たい組合せを一つ選ぶなら?

個人的にベスト・キャスティングを選んでみました。

アルジャノンは僅差で芹香斗亜。
キキジャノンは本当にハマり過ぎてす。
何度観ても、飽きるどころか、新鮮でパンチが効いてて、毎回ハラハラ。
何が飛び出てくるか、予測がつかないビックリ箱みたいなアルジャノン。

セシリィは音くり寿に軍配…かな。
美伶セシリィもとても良かったし、安定感はさすがの美伶ちゃん。
ただ、くり寿ちゃんの半端ないリアル・セシリィに圧倒されまして…。

執事のレインは、ぶっちぎりで鳳月杏。
貴族に仕える誇りを持った、ノーブルでロイヤル感満載の執事。
いつも慌てず、騒がず、冷静でいながら温かみも感じる、聡明なレイン。
うちにも鳳月レインがほしいです…!
でも、執事部屋のスペースがない……あ、通いで来てくれませんか?
(そもそも執事を雇える余裕資金がないやん)

……よって、Bパターンか、Dパターンですね。
鳳月アルジャノンも捨て難いんですよ~~。

…二つはダメ?
キキジャノンが本当にハマり過ぎだし、鳳月さんの執事は素敵すぎるので、本気で迷います。

……う~~~ん、Dパターンかな。
鳳月アルジー相手だと、アーネストが兄貴風を吹かせ、自らアドリブを仕掛けるから。
そんな明日海アーネストを見たいから。

最後の鍵を握るのは、明日海りおなんですね。
…愛しています。(アーネストの声で読んで下さい)

芹香斗亜アルジャノンは、120%超のアルジャノンだと思います。
彼以上に「らしい」アルジャノンはいるのかな?…と結構本気で思ってます。

ただ、アーネストやセシリィと絡んだ時に、互いに引き出し合う香りがあるとしたら。
鳳月アルジャノンのそれに、より心の琴線をかき乱されました。

鳳月さんの表情や仕草は、愁いや揺れを呼び覚ます力があるように感じます。

Ernest in Love は喜劇ですが、ジャックやアルジャノンの生い立ちや背景は、悲哀に彩られています。

乳幼児期に家族と引き離され、慈悲深い紳士の元で養育された兄・ジャック。
父とは一歳の時に、母とも若くして死別した弟・アルジャノン。

鳳月杏は、セシリィとのデュエットで、それまでおくびにも出さなかった孤独を覗かせます。
哀しみや不安を滲ませる事で、より多面的に、立体的に、魅力的に、繊細に…「アルジャノンを生きた」

『子どものように』のデュエットでは、アルジャノンが孤独と悲哀を滲ませるほど、セシリィに息づく母性と慈愛が溢れてきます。

芹香斗亜と鳳月杏は、アルジャノンに対するアプローチが異なるように見えます。
その違いこそが魅力ですし、私はどちらのアルジャノンも大好き。

芹香斗亜・鳳月杏とも、それぞれのアルジャノンには大いに笑わせてもらいました。

ただ、私を泣かせたアルジャノンは、鳳月杏でした。

鳳月杏が生きたアルジャノンの切なげな横顔を、私は忘れないでしょう。



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