10月下旬の東京宝塚劇場、花組エリザベート上演中の望海風斗(89期)の楽屋にて。
陣中見舞いに訪れた朝夏まなと(88期宙組、元花組)、花組トップ明日海りお(89期)が集結する中、さらに飛び込んで来たのは、芹香斗亜(93期花組)だった。
「望海さん、イチゴ食べません?」
涙ぐむ明日海りおを抱きしめる、望海風斗の同期愛コンビが目に入り、
「…お邪魔でした?」
一瞬ひるむ芹香に、
「うん、邪魔」
いつもと違い、光速の返しをする花組トップ。 しかも、漢字つき。
さらに怯む芹香に、望海があわてて、
「ごめんね、ちょっと取り込んでて…」
いつもと違い、焦りを見せている望海の様子に、芹香は力を得て、態勢を立て直す。
ふと同期コンビの奥をみやると、背が高く手足が長くてカッコイイ人、つまり己と似た体型の先輩を発見。
「朝夏さん? おはようございます」
「おっはよー」
「どうしたんですか? 宙組はお稽古、大詰めですよね?」
「そうだけど、あやちゃんとみりおとキキちゃんに会いに来たよ」
いつ、いかなる時も、博愛主義をつらぬく宙組次期トップスター朝夏まなと。
ぶれません。
「如何ですか、イチゴ」
「あ、いただこうかな」
高級そうな大粒のイチゴを口にした朝夏先輩、ひとくち食べて、
「甘ーい! 美味しいね、これ」
「どうぞ、もっと良かったら」
ぴく、と黄泉の帝王が反応し、望海の胸に埋めていた顔を上げる。
「…あまいの?」
まだ無表情の帝王に向かい、皇太子キキが爽やかに応える。
「すっごく甘いんです。 よかったら、みりおさんもどうぞ」
奨められたイチゴをそっとつまみ、口に入れるや、
「あまいね~♡」
ゆるゆる、ほわほわの笑みが、黄泉の帝王の顔に広がった。
「だいもんも、たべなよ~」
ええ、もともとは望海さんに持ってきたんですけどね。
そう思っても、敢えて口には出さない下級生・芹香斗亜。
イチゴのパックを差し出し、にっこり微笑む。
「どうぞ、召し上がってください」
「あ、じゃあ、いただきます」
差し出されたイチゴを手に取る、望海風斗。
紅いくちびるに、吸い込まれていく紅いイチゴ。
その様を、うっとり見つめる93期、にこにこ見つめる89期、にやにや見つめる88期。
なお、「私のじゃがりこは断ったのにヒドイ」などと言わないところが、明日海りおの美しき心根。
「あ、ほんとだ。 甘いね。 これ、高かったんじゃないの?」
「頂き物なんで、値段はわかりませんが…お口に合って、良かったです」
「へぇ、差し入れ?」
「はい」
「センスいいね」
差し入れてくれた人のセンスを褒めていると分かっていても、望海さんに褒められて、クラクラ嬉しい芹香斗亜。
「あの、良かったら、少し持って帰られませんか?」
「えー、いいの? あーでも、荷物多いから、潰しちゃうかも…」
「だったら、私が運びます。 ホテルの部屋まで」
そう、東京公演中はホテル泊なのだ。
「そんな悪いよ」
「いいえ! 下級生の務めですから!」
いつ、イチゴを運ぶことが下級生の務めになったのか?
それは芹香斗亜にしか、わかりません。
…と、その時。
「…そこまでしなくて良いよ、キキちゃん」
冷たく青い炎が、ゆらりと揺らめいた。
さらに、追い討ちをかけるが如く、
「そうそう、私が運ぶからさ」
朝夏先輩の笑顔が、帝王の炎を打ち払った。
「今夜はあやちゃんの部屋に泊めてもらって、明日、朝イチの新幹線で帰るから」
驚愕の89期と93期を尻目に、88期・朝夏まなと、余裕の笑顔。
「あやちゃん、よろしくね」
ウィンクしつつ、ピッと敬礼を飛ばす朝夏まなと。
舞台以外でも、色気の無駄遣い、ハンパない。
戦慄の炎がやおら立ちのぼる、望海風斗の楽屋。
これから舞台本番なのに、どうなる? どうする?!
以下、次号。
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陣中見舞いに訪れた朝夏まなと(88期宙組、元花組)、花組トップ明日海りお(89期)が集結する中、さらに飛び込んで来たのは、芹香斗亜(93期花組)だった。
「望海さん、イチゴ食べません?」
涙ぐむ明日海りおを抱きしめる、望海風斗の同期愛コンビが目に入り、
「…お邪魔でした?」
一瞬ひるむ芹香に、
「うん、邪魔」
いつもと違い、光速の返しをする花組トップ。 しかも、漢字つき。
さらに怯む芹香に、望海があわてて、
「ごめんね、ちょっと取り込んでて…」
いつもと違い、焦りを見せている望海の様子に、芹香は力を得て、態勢を立て直す。
ふと同期コンビの奥をみやると、背が高く手足が長くてカッコイイ人、つまり己と似た体型の先輩を発見。
「朝夏さん? おはようございます」
「おっはよー」
「どうしたんですか? 宙組はお稽古、大詰めですよね?」
「そうだけど、あやちゃんとみりおとキキちゃんに会いに来たよ」
いつ、いかなる時も、博愛主義をつらぬく宙組次期トップスター朝夏まなと。
ぶれません。
「如何ですか、イチゴ」
「あ、いただこうかな」
高級そうな大粒のイチゴを口にした朝夏先輩、ひとくち食べて、
「甘ーい! 美味しいね、これ」
「どうぞ、もっと良かったら」
ぴく、と黄泉の帝王が反応し、望海の胸に埋めていた顔を上げる。
「…あまいの?」
まだ無表情の帝王に向かい、皇太子キキが爽やかに応える。
「すっごく甘いんです。 よかったら、みりおさんもどうぞ」
奨められたイチゴをそっとつまみ、口に入れるや、
「あまいね~♡」
ゆるゆる、ほわほわの笑みが、黄泉の帝王の顔に広がった。
「だいもんも、たべなよ~」
ええ、もともとは望海さんに持ってきたんですけどね。
そう思っても、敢えて口には出さない下級生・芹香斗亜。
イチゴのパックを差し出し、にっこり微笑む。
「どうぞ、召し上がってください」
「あ、じゃあ、いただきます」
差し出されたイチゴを手に取る、望海風斗。
紅いくちびるに、吸い込まれていく紅いイチゴ。
その様を、うっとり見つめる93期、にこにこ見つめる89期、にやにや見つめる88期。
なお、「私のじゃがりこは断ったのにヒドイ」などと言わないところが、明日海りおの美しき心根。
「あ、ほんとだ。 甘いね。 これ、高かったんじゃないの?」
「頂き物なんで、値段はわかりませんが…お口に合って、良かったです」
「へぇ、差し入れ?」
「はい」
「センスいいね」
差し入れてくれた人のセンスを褒めていると分かっていても、望海さんに褒められて、クラクラ嬉しい芹香斗亜。
「あの、良かったら、少し持って帰られませんか?」
「えー、いいの? あーでも、荷物多いから、潰しちゃうかも…」
「だったら、私が運びます。 ホテルの部屋まで」
そう、東京公演中はホテル泊なのだ。
「そんな悪いよ」
「いいえ! 下級生の務めですから!」
いつ、イチゴを運ぶことが下級生の務めになったのか?
それは芹香斗亜にしか、わかりません。
…と、その時。
「…そこまでしなくて良いよ、キキちゃん」
冷たく青い炎が、ゆらりと揺らめいた。
さらに、追い討ちをかけるが如く、
「そうそう、私が運ぶからさ」
朝夏先輩の笑顔が、帝王の炎を打ち払った。
「今夜はあやちゃんの部屋に泊めてもらって、明日、朝イチの新幹線で帰るから」
驚愕の89期と93期を尻目に、88期・朝夏まなと、余裕の笑顔。
「あやちゃん、よろしくね」
ウィンクしつつ、ピッと敬礼を飛ばす朝夏まなと。
舞台以外でも、色気の無駄遣い、ハンパない。
戦慄の炎がやおら立ちのぼる、望海風斗の楽屋。
これから舞台本番なのに、どうなる? どうする?!
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