2020年8月1日(土)大阪・梅田芸術劇場にて、『FLYING SAPA』初日の舞台を観劇しての感想シリーズ、ようやくキャスト別の感想です。

 

それでは、ネタバレがありますゆえ、まだ知りたくない方はどうぞここから先は読まれませんように。

 

わが家は電波障害のため、スカイステージが受像できず、スカステは入っていません。

スカステ初日ニュース(8月3日放送)で「観てもネタバレしないでね」と仰っていたそうですね。

タイムラグがあって、すみません…。

 

それを知る前から「決定的なことは書くまい」と思っていましたが、念のため、8月1日、2日に書いた感想記事も一部修正しました。

 

ただ、ある程度のさわりは説明しないと意味不明の感想になるため、加減をみながら書いていきますね。

 

 

1)真風涼帆 (92期・研15)

 

主人公・オバクは水星(ポルンカ)の秩序を守る兵士。

人々の意識に潜入し、危険思想や異端分子を発見し、摘発することが仕事。

オバク自身は記憶をなくしています。

 

オバク、オバクと呼んでますが、水星では個人は番号で識別され、個別の名前はありません。

「でも、それだと味気ないから…」と、彼をサポートする公務員・タルコフ(寿つかさ)が命名。

 

物語の後半で判明する、オバクの地球時代の名前にときめいたのは、私だけではない筈だ。

でも、真風さんにはオバクの方が似合うかもしれません。

 

そう、真風涼帆っすよ、センパイ!(←誰?)

 

溶暗に浮かび上がる、白いコートの背中。

水星の兵士が着用する、フード付きの白いコート姿。

フードを目深にかぶっているから、振り返っても(遠目に)顔は見えません。

それに、舞台上にはモブが多勢スタンバイしていました。

 

ですが、コート姿のシルエットが見えた瞬間、

「真風さん……!」

 

真風涼帆パーソナルブック(2015年版)にて、「セーター姿で彼女(天彩峰里)とデート」設定の写真を見た時も思いましたが、広い背中のシルエットが目に入った瞬間、

 

「真風かっこいい、真風かっこいい、真風かっこいい…」

 

と延々そんな呪文を唱えて終始しそうで、僕は怖い…。

(何ゆえにロミオ?)

 

花組『はいからさんが通る』の少尉(柚香光)に続き、「掴みはオッケー!」満載の登場でした。

 

そういえば、あちらは奈穂子(小柳先生)で、こちらは久美子(上田先生)ですね。

宝塚が誇る、萌えとトキメキを生み出す二大女王(演出家)じゃないですか。

 

タイプが違う萌えとトキメキですが、女子のツボを確実につく点では一緒。

小柳奈穂子先生と、上田久美子先生。

宝塚歌劇団さん、大切にして下さいよ?

 

…で、真風さんの演技に関する感想ですが。

 

発声を変えてたよね、真風さん?

より低く、落ち着いた声にしようと、発声の仕方を変えていた気がします。

 

SAPAという作品世界、オバクという人物には無機質で低音の声が確かに合っています。

工夫と努力の段階ですし、まだ揺らぎはあるものの、その姿勢に感じ入りました。

声をより低く出し、さらに聴き取りやすく話すことはハードルが高いだけに。

 

今更ですが、立ち姿や寝転がる姿がリアルに男性に見えました。

 

ある娘役さんとの絡みでは、心臓のポンプ作用MAX。

真風さんが上半身を起こし、相手女性に話しかけるだけで MAX OVER。

(ドキドキしたと言いたいらしい)

 

コートやスーツなど、現代の普通の服装ほど、着こなしが難しいと思います。

そういった服装でもナチュラルに男性に見える真風さんでした。

 

ポスターやフライヤーの写真同様、プログラムの写真も素敵です。

(TCAのグッズ販促係か?)

 

個人的に「リアル男子に見えた」以上に、「発声について試行錯誤した片鱗がのぞいた」ように感じた(勘違いかもしれませんが…)ことが印象に残りました。

 

体格に恵まれた真風さんは、その立ち姿だけで「男役」として、高い完成度を見せてくれます。

 

ただ、個人的に体格に、少々鼻にかかった「発声」が気になっていました。

 

しかし、「声」を変えることは至難の業です。

どれほど学年を重ねても、男役声を習得できぬまま、卒業していく生徒は決して少なくなかろう…と思います。

 

「男役声」という意味では、独自のそれを習得されていますし、声フェチの私がこだわりすぎ、気にしすぎなんだろう…と思ってきました。

 

それだけに、今回の舞台で発した台詞の一発目で、

「いつもと違う…!」と感じた衝撃は、「真風の背中」並みの衝撃でした。

 

声は器質的な側面が大きいので、簡単ではないと思います。

真風さんの声も「変わった」のではなく、「変えようと努めている」段階に聴こえました。

 

そういう姿勢が垣間見えた(気がした)事で、オバクがより素敵に感じたのは、私が宝塚ファンだからでしょうか。

 

宝塚ファンの醍醐味の一つは「生徒の変化や成長を見守ること」ですから。

 

初日挨拶で感極まったとき、そのまま泣き崩れず、涙がこぼれぬよう虚空を見上げ、また話し始める気丈さも印象的でした。

真風涼帆の気概が伝わってくる舞台だと思います。

 

そして、真風涼帆の魅力を引き出す作品ですね。

 

上田久美子先生は「宝塚らしからぬ」背骨を備えた演出家だと感じてきました。

同時に、彼女ほどタカラジェンヌが持つポテンシャルを巧みに引き出す演出家は稀有だとも。

 

タカラジェンヌとして恵まれた容姿を持つが故に、そのインパクトの強さで、それ以外の印象が薄まる傾向は、昔から見受けられました。

 

真風さんはそんな恵まれた資質の持ち主の一人だと思います。

見た目のインパクトが強力で、水面下の努力や工夫が伝わりにくいタイプかもしれません。

(想像ですけれど)

 

上田久美子先生は「セオリーにこだわらなくて良い」とお考えなのでしょう。

それは以前から感じていました。

 

セオリーとは「確立された理論」という意味。

宝塚歌劇団でいえば、「歌って・踊って・芝居して、最後はパレード」がお約束。

 

『FLYING SAPA』は、多くの「お約束」を剥ぎ取りました。

 

それは世界観をより明確に打ち出す効果と共に、もう一つの効果を授けました。

 

それは「トップスターの魅力をより際立たせる」こと。

 

真風さんは決して歌は得意ではありません。

ダンサーでもない。

 

真風涼帆の真骨頂は「立っているだけで絵になる」

 

これは努力では如何ともし難い要素を多々含んだ、男役にとって高いハードルです。

 

立っているだけで絵になる。

男の孤愁と色香が滲み出る。

 

真風涼帆が備えた、男役として得難い魅力を存分に引き出すため、上田先生は引き算に次ぐ引き算を重ね、タカラヅカが持つ羽毛を剥ぎとりました。

 

上田先生が引いたり、外したりしたモノは、宝塚歌劇が創り上げてきた数々の「装置」でしょう。

 

それは本来、リアルな男性ではない「男役」を、素敵な存在に見せるために創意工夫を重ねて生まれ、ブラッシュアップされてきた「装置」です。

 

それらを排除することで、真風の真価を発揮できる。

 

上田先生が「真風涼帆」というタカラジェンヌを信頼したから挑んだ冒険だと思います。

 

真風涼帆はその信頼に応えようと努めたことでしょう。

発声に対する努力の姿勢からも、それは感じられました。

 

『FLYING SAPA』を観て、私は舞台上にいないタカラジェンヌを想いました。

それは、元・宙組娘役の伶美うらら(95期)です。

 

美貌に恵まれ、立っているだけで絵になる娘役でした。

大人の色香や演技力にも恵まれていましたが、いかんせん歌唱力が極めて弱かった。

 

100周年以降の宝塚は、それ以前の反動のためか、歌唱力重視に傾きました。

今もそれは続いています。

(そして私も、歌唱力重視寄り)

 

上田先生は『翼ある人びと』『神々の土地』で共に仕事をされた経緯もあってでしょう、歌劇誌上にて伶美さんの退団を惜しむコメントを寄せられています。

 

そこから、私が受け取ったメッセージは「偏重に対する危惧」でした。


ごく限られた指標で、評価を定めることへの疑問や警鐘。

 

「くーみんは、うららお気に入りだから」という発想で丸めるのは勿体ない、様々な事に当てはめて考えたくなるコメントでした。

 

加えて、上田久美子作品は常に、良い意味での「裏切り」を含んでいます。

 

一見すると悲劇だし、物理的には結ばれなかったけれど、気持ちの上では確かな実感を得られた。

そんな「一見、不幸に見える幸せ」を浮かび上がらせる作家です。

 

宝塚歌劇は「いかにトップスターを魅力的に見せるか」が作品創りの至上命題と言われています。

 

本作は、「これほど真風がかっこよく見えた作品があるだろうか?」と唸る仕掛け満載。

 

その仕掛けとは、「余計な装置を外すこと」

よりシンプルに、「真風涼帆という素材」を舞台に立たせること。

 

大胆すぎて驚きましたが、これほど効果的な「真風の魅せ方」はない。

 

そして、真風自身もそれに応え、より一層努力したであろうことが伺えます。

 

 

…と、以上はすべて、舞台を観て感じた私個人の感想にすぎません。

 

実際のところは、上田久美子先生と真風さんにお聞きしない事にはわかりません。

 

スパイシーだし、締め方は上田先生らしからぬ裏切り方(?)…だったりと、相変わらず一筋縄でいかない上田作品。


(その代わり、宝塚的には王道な着地点でした)


好き嫌いは分かれると思います。

 

ただ、これだけはきっと観客全員の感想は一致すると思う。

 

「真風涼帆がめちゃくちゃカッコイイ」

 

…この感想を引き出せたら、宝塚歌劇としては充分に成功。

 

上田久美子先生は一見すると「宝塚の座付き演出家」らしからぬ作家ですが、その実、最も宝塚に必要とされるクリエイターでしょう。

 

そして、真風涼帆。

登場した瞬間から幕が下りるまで、カッコ良かったです。

 

 

▽「ゆりか」は男女兼用名だよね?

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