Space Scraper(角松敏生)
角松敏生のアルバム「Weekend Fly To The Sun」に収録された、「Space Scraper」(超高層ビル街)をネタに「カルロス・リオス(後編)」である。■Musicians List(D) John Robinson (B) Louis Johnson →クインシー・ジョーンズ「愛のコリーダ」のリズム隊である。(K) Dean Grant, Brian Man(G) Al Mackey /ex Earth,Wind & Fire 13Cats(G) Carlos Rios(Horn Section) The Phoenix Horns Esquire /from Earth,Wind & Fire■コメント このミュージシャンのラインナップはAORというよりも、「ディスコ」ですね。しかし、日本人である角松が書いた曲を彼らが演奏すると、不思議とFusionぽいサウンドになるから面白い。この曲のギターをSteve Lukatherに変えると、「愛のコリーダ」になるのだが、Lukatherも当時は日本人のアルバムにがんがん参加していたのに、角松は一度も共演していない。この点に関しては、いずれ「角松とTOTOに関する考察」として、改めて掘り下げてみよう。基本的に角松はTOTOと距離を置いているように見えるのだが、実は微妙な接点があるのだ。■カルロス・リオス(後編) カルロスがデビューするきっかけについては、「Brother To Brother」に書いたとおり。ちょっと嘘っぽい感じがするが、ヤングギターのインタビューで本人が語っていた内容だから、多少の尾ひれが付いたとしても、かなり真実に近いと見ている。「Brother To Brother」参加後は、様々なレコーディングに参加しながら、全盛期のライオネル・リッチーや「愛のコリーダ」のヒット後に来日したクインシー・ジョーンズの武道館公演といったコンサートにも参加していた。今は何をしているのであろう。 カルロスのギターの魅力は2点。一つは「Space Scraper」の中盤でも聞かれる、独特の緊張感と哀愁が漂うリードギターである。特にスケール的な解釈をした時には「潜水競争」的な長いフレーズを弾く。ギターという楽器は呼吸によって発音するわけではないから、理屈から言えば無限に長いフレーズを展開することができるのだが、実際ギタリストがフレーズを考える時は息継ぎのあるフレーズを弾くものだ。カルロスは、このスケールライクなフレーズが妙に長いのだ。この曲のソロでも、「高速駆け上がり」~「チョーキングによるギミック」の後に続く、上がったり下がったりのスケールフレーズを一息で歌うのは非常にむずかしい。そしてこのフレーズの最後に高音域のチョーキングで一息つくというのが定番の展開である。Pat Methenyとか渡辺香津美とかJazz系のギタリストもロック系に比べると比較的長いフレーズを弾くのだが、カルロスは最後をチョーキングで処理するため、「息を止めて潜ってます~バサロです~そろそろ浮上~プハ~ッ」という感じが強いのである。Chick Corea Elektric Band の1stに収録されている「Elektric City」でも、呼吸が苦しくなるような彼のソロを聴くことができる。 もう一つの魅力はバッキングの歌わせ方が非常に巧みであることだ。「Weekend Fly To The Sun」では、ほぼ全曲でカルロスのギターがフィーチャーされており、実はソロ以上に表情豊かな彼のバッキングを聞くことができる。この辺のうまさがクインシーを始めとする一流アーチストが彼を登用した理由であるのかもしれない。バッキング好きのギタリストは必聴のアルバムである。