PEG (Steely Dan)
Jay Graydonの名前を一躍有名にしたこの曲を紹介しよう。■Musicians List(Vo) Donald Fagen (Cho) Michael McDonald (D) Rick Marotta (B) Chuck Reiney(K) Don Grolnick (G) Jay Graydon, Steve Khan (Hrn) Tom Scott■コメント Steely Danといえば、現在も活発に活動している、ドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーの二人によるユニットである。最近のアルバムでは、ツアーにも参加しているミュージシャンをそのまま起用しているが、このアルバム「AJA」の当時は、「スタジオを通年で借り切って」「気に入ったミュージシャンを豪勢に侍らせて」アルバムづくりをしていたことで有名である。ミュージシャンにとっては、Steely Danのレコーディングに招かれたことがステイタスになっていたようだが、完全主義者である当の二人は、有名なミュージシャンであろうとフレーズが気に入らなければ、バンバン差し替えてしまったというから、実際にリリースされたアルバムにクレジットされるかどうか、ミュージシャン達もドキドキしていたことだろう。 そんな彼らの完全主義者ぶりを語る時に引用されるのが、この曲のセッションである。簡単にいえば、「何人もの有名ミュージシャンにソロを弾かせたが、全然気に入らず、最後にジェイ・グレイドンが弾いたソロがOKテイクになった。」というエピソードなのだが、このときボツになったミュージシャンの顔ぶれがすごいのだ。参加したプレーヤーには諸説あって、当のジェイのコメントも時期によって変わったりするので、正確なところは把握できないのだが、Lee Ritenour,Robben Ford, Tom Scot, Elliot Randoll, Walter Becker, Denis Budmia等、当時のスタジオ・トップミュージシャンのソロをボツにしたというのだから、贅沢な、いやもったいない話だ。「Aja」についてドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーが解説をする映像を見たことがあり、そこでこの「PEG」のソロの話が語られていたが、その中でボツになったソロがいくつかプレイバックされたがいい演奏でした。 そんないきさつからジェイはLA音楽シーンで脚光を浴びることになったのだ。結局の所、どんなソロだったのかといえば、「う~ん」とうなってしまう不思議なソロである。ある意味、一世一代の名演なんだと思うが、エアプレイ等で聞かれる理路整然としたたたずまいはなく、かなりフリーな感じで弾いている。これが完全なアドリブだとしたら、頭の中をのぞいてみたいプレイである。 このブログでは「あの曲に似ている角松ソング」というネタばらし的な話題が出ることが多いのだが、角松の場合、日本の音楽業界に依然として蔓延る、いわゆるパクリ(リスナーは知らないと思うからやっちゃえ)というよりは、本人達へのリスペクトの意味を込めた引用であると考えている。事実、角松自身が昔FM番組で、元ネタと影響を受けた角松ソングを並べてかけてみたりしていたから、かなり確信犯的なところがある。「俺がかっこいいと思う曲を広く世間に知らせたい。」という一種の啓蒙活動である。こうして角松を通じて音楽の世界を拡げてもらったというファンは多いはずだ。 という話をここでしたのは、この曲を元に作られた超有名な曲が存在するからである。ご存じLarry Carltonの「Room335」である。これに関してはラリー自身がPEGに影響されて作ったと認めている。もちろんROOM335がギターフュージョンの名曲であるのは、この話を聞いたからといって揺らぐものではない。かえって、元曲を昇華させて、さらにかっこよくしたところにアーチストとしてのプライドを感じるのである。角松もこうした手法を曲作りに取り入れているわけだし、元曲よりかっこいい曲にしてしまう角松の才能とセンスにはただただ脱帽するしかないのだ。