<特集>東日本巨大地震のファンドへの影響(1)=国内株式は大きく下げるも投信経由の投資家は静観の構え
東日本巨大地震発生前の3月10日に4兆3234億円あった国内株式型ファンドの純資産額は、3月17日までに5542億円減少し、3兆7692億円となった。国内株式型ファンドの純資産額の12.8%がこの5営業日の間に失われたことになる。短期間の減少額として類まれに見る規模であるが、意外にも投資家はこの事態をまずは冷静に事態を見定めようとしているようだ。
同期間、国内株式型ファンド全体の純資産額加重平均トータルリターンはマイナス12.9%と純資産額の減少率とほぼ一致する。このことから、東日本巨大地震発生後の国内株式型ファンドの純資産額の減少は、資産価格の下落でそのほとんどを説明することが可能であり、大きく純資金の流出は起きていないと思われる。投資信託を通じて国内株式へ投資をしている投資家は積極的に買い増しこそしていないものの、まずは事態を見定めようと静観の構えでいることがうかがえる。
3月11日以降の国内株式の下げ方は強烈で、11日こそ地震発生直後に日経平均株価が100円超下げ幅を拡大させた程度の影響であったが、事態の深刻さが報道された週明け14日には寄り付きから売りが殺到し、ほとんどの銘柄で値が付かない状態が続いた。その後も福島第一原子力発電所の状況が不透明感を増したことで下落は続き、大証の日経平均先物は一時8000円を割り込んだ。結果、14日、15日で日経平均株価は2189円28銭も下落した。
16日こそ前日の大幅安の反動で上昇したものの、17日も外国為替市場で一時1ドル=76円台まで円高・ドル安が進んだことを背景に不安定な値動きが続いた。この間の売りの主体は(1)状況が見えないなか、ひとまず日本株を売却しようと考えた海外投資家(2)下落に乗じて先物に売り仕掛けをしたヘッジファンドなど短期筋の投資家(3)信用買いを膨らませていたため追い証(追加担保差し入れ義務)を迫られた個人投資家と思われる。また、3月10日と17日の終値の比較では、日経平均株価はマイナス14.1%であったが、東証マザーズ指数はマイナス18.5%と小型株の下落率が大きかった。比較的流動性の乏しい小型株は、売り圧力に耐え切れず需給要因で大型株以上に下落したものと考えられる。
<国際分散投資が国内で進展していたことが奏功>
同期間のカテゴリー別の騰落率でもインデックスと同様に、「国内大型ブレンド」がマイナス11.8%と下げ方が相対的に小さかった一方、「国内小型グロース」がマイナス16.0%と最も大きく下落した。そのような異常事態ともいえるなか、国内株式ファンドの解約が殺到しなかった背景の一つには個人投資家を中心とした投資信託を経由した投資家の国際分散投資がすでに進んでいたことが挙げられる。
追加型公募株式投信に占める国内株式ファンドの割合は2月末時点で9.3%にまで減少しており、国際分散投資を進めている投資家にとって今回の下落の影響は2008年の世界同時株安と比較すると小さかったのではないだろうか。
<今後の政府の対応次第では国内株式離れが加速する可能性も>
今後の国内株式市場については、日々刻々と事態が変わっていくなかで、しばらくは不安定な値動きが続く可能性はある。特に、電力供給量不足が企業の稼働率を引き下げる可能性がある点については懸念される。
ただし、これ以上事態が深刻化しない限り、今後1年内には日経平均株価は3月10日の水準にまでは戻すと予想する。しかし、問題はその後である。第一には今回被災した地域の復興、続いて、その間にTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加など政府が掲げる成長戦略が停滞しないこと、また、今回生産工場などが被害にあった企業の操業停止が中長期的な顧客離れにつながらないための支援など、政府に課せられた課題は多い。
今回の天災に際しては静観を保った投資家が、今後国内株式に資産をとどめるか、さらに海外への投資を加速させるかは、むしろこれらの課題をクリアできるかどうかを見定めたうえで決まるだろう。危機をチャンスとするような政府のかじ取りに期待したい。
[ 株式新聞速報ニュース/KABDAS-EXPRESS ]
提供:モーニングスター社