「アレどこ行ったっけ?」とモノを探す時間を1秒でも作りたくない。
探し出したら最後、まず出てこない。
出てくる時もある、ただしそれはまだいわゆる【本物のアレ】には達していない。
【アレ】には1軍2軍あるいは金賞銀賞、松竹など、実はランクがあり、「探しても探しても出てこない」のは1軍・金賞・松に相当する。
本物のアレ。
探す人間にはありがたくないランク付けでも、「探されても探されても出ていかないなんて」とアレの世界では英雄扱いされている可能性がある。
物事は常に多面体だ。
今朝の【本物のアレ】は、娘の日焼け止めクリーム。
ないないない、ここに置いたはずなのに、なんでないの。
なんでないの。
なんでなんで。
「ここに置いたはずなのに」、モノをなくす人間とこのセリフは、だいたいセット、間違いない。
「ココニオイタハズナノニ」?、それならなぜ、ここにないのだ。
一番聞きたくないセリフを朝から聞かされているお母さんの身にもなりなさい。
ああ、頭が痛い。
あとでまた探しなさい。
もうすぐ学校行く時間よ……。
子どもたちが登校し静かになった家の中を、日焼け止めクリームを見つけるために、ウロウロとさまよう。
不毛な時間。
不毛な行い。
これをやりたくないからいつも片づけをしているのに。
自分がいくら片づけをしても、「お母さん、アレがないんだけど」とふいに矢でうたれるのが母親。
そのたびに倒れ込み、打ちのめされても、我が子のために、家中をさまよう。
いいのよ、お母さんをうっても。
あなたがいずれ同じ道を通ったときに、今のお母さんの気持ち、なんとなくわかるでしょう……。
ま、いっか。
昨日焼いたパンとコーヒーtimeにしよ。
ほ〜らやっぱり、パン焼いといて良かった。
こういうのにいちいち救われていかないと、とてもじゃないが、母親、やり続けられない