しばらくして、案内される。
カウンターだけの狭い店内、雰囲気。変わらない。
そして、何より店主が元気だった。
客との掛け合い、台詞もまったくそのままだ。
奥のカウンターに座るおばちゃんに向かっている。
「うまいやろー」と、店主。
「うまいわー、ほんまうまいわー」と、おばちゃん。
店主の声よりも高いテンションで応える。
「そーやろ。こんなうまいうどん、ないでー」と、
店主はニコニコ顔である。
ぼくもそんな風に対応できれば、心底この店の醍醐味を
味わうことが出来るのだろうが、たぶん、無理だ。
「きつねうどんにして良かった、かな。」と、思う。
「きつねうどん」はおそらくこの店の正統ではないとはいえ、
決してまずいわけでも、手を抜いているわけでもない。
つゆは一人前ずつ小鍋でうどんの茹で上がりにあわせて作られ、
丼でうどんと絶妙のタイミング合わせられる。
手早く具が乗せられ、すぐに客の前に供される。
その仕事にはまったく隙がない。
茹でたて、出来たてを一秒でも早く客に届けようとする姿勢は
店主のうどんにかける情熱の表れなのだろう。