司法試験とバリスタ -13ページ目
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商法17年第2問

第 2 問
 Z株式会社の代表取締役Bは,X銀行から,Z社が融資を受ける条件として,信用のある第三者が裏書した約束手形を差し入れることを要求された。そこで,Bは,高校時代からの友人であるY株式会社甲支店の支店長Aに依頼し,Y社を受取人,手形金額を1000万円,満期を平成17年7月15日とするZ社振出しの約束手形にY社甲支店長Aとの裏書を得たが,Aは,手形の振出しや保証を行うことをY社の内規で禁じられていた。
 Bは,この手形をX銀行に交付し,X銀行は,その手形金額から満期までの利息を控除した金額をZ社に貸し付けたが,Z社は,当該借受金を返済することなく,平成17年5月10日に破産手続開始の申立てをし,同月17日,Z社に対して破産手続開始の決定がされた。
 X銀行が同月18日にY社に対して手形金の支払を請求した場合,この請求は認められるか。

1,XのYに対する請求の可否。Yに遡及義務(77Ⅰ①15Ⅰ)が発生しているか
 隠れた手形保証→通常の譲渡裏書の効力→しかし、Y社の内規違反、遡及義務は生じない?→Aが支配人(商法21Ⅰ)ならば代理権の制限は第三者に対抗できない。→Aは支配人か→支配人の意義→包括的代理権必要→あたらない。→もっとも、Aは支店長という名称→24ⅠによりXが善意無重過失なら遡及義務発生
 
2,満期前遡及の可否
 77Ⅰ④→確かに約束手形には引受がないので引受拒絶はありえない→しかし債務者破産・強制執行不奏効の場合→43②→なしうる

商法17年第1問

第 1 問
 甲,乙及び丙株式会社(いずれも株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律上の委員会等設置会社ではない。)が定時株主総会において普通決議の方法でした次の各決議について,商法上どのような問題があるか論ぜよ。
 1  甲社では,「本総会終結時に退任する取締役A及び監査役Bに対し当社の退職慰労金支給規程に従って退職慰労金を支給することとし,その具体的な金額,支給時期及び方法の決定は取締役会に一任する。」と決議した。
 2  乙社では,1年前の定時株主総会で任期2年,月額報酬70万円として選任されていたC専務取締役について,取締役会決議によりその職務内容が非常勤取締役に変更されたため,「Cの月額報酬を7万円に変更する。」と決議した。
 3  丙社では,「取締役にストック・オプションとして行使価額の総額を10億円とし,目的たる株式を普通株式合計10万株とする新株予約権を付与することとし,その具体的な発行時期及び方法の決定は取締役会に一任する。」と決議した。

小問1

・退職慰労金の支給に報酬規制が及ぶか否か,
→退職慰労金が報酬に含まれるか→含まれる(判例)
 
・取締役と監査役の報酬規制の違い,
 取締役の場合→361Ⅰ①(お手盛り防止)→支払規定にしたがっての支給が有効か→一定の基準に従えば有効(判例)→定款の定めに反すれば無効(361)
 監査役の場合→387Ⅰ(監査役の独立性確保)→決議は有効か→具体的金額を取締役会に委ねている点、387Ⅰに反する

小問2
・任期途中に職務内容に変更が生じた取締役の報酬額変更の可否,
 減額する決議は有効か→原則できない(判例)→例外:取締役の同意、報酬特約

小問3
・新株予約権の有利発行規制と報酬規制の関係等について,
 ストックオプションの付与について
 ストックオプションは361条「報酬等」か→あたる(361)→具体的額・算定方法について決議なし→361違反
 

刑訴17年第2問

第 2 問
 放火事件で起訴された被告人甲は,捜査・公判を通じて,「自分は犯人ではない。犯行現場には行ったこともない。」と述べて犯行を否認していたが,起訴前に,テレビ局のインタビューを受けたことがあり,当該インタビューにおいては,「放火があったとき,現場付近にいたことは確かだが,自分は犯人ではない。」と述べていた。捜査機関が,テレビ放映された当該インタビューをビデオテープに録画していたところ,検察官は,甲の犯行を立証するための証拠として,当該インタビューの内容を使用しようと考え,このビデオテープを証拠調べ請求した。 裁判所は,このビデオテープを証拠として採用できるか。


1,証拠能力(317)が認められるか
 ・供述証拠と非供述証拠
 ・コピーを使用している点→原則×しかし1条→肯定
 ・伝聞証拠にあたらないか→伝聞法則の趣旨→要証事実との関係で相対的に→あたる
 ・伝聞例外にあたるか→321以下→322Ⅰ本文前段→要件クリアー(書面・署名もしくは押印・不利益事実の承認・任意性)
2,結論採用可能


刑訴17年第1問

第 1 問
 警察官Aは,覚せい剤の密売人と目される甲を覚せい剤譲渡の被疑者として通常逮捕し,その際,甲が持っていた携帯電話を,そのメモ

リーの内容を確認することなく差し押さえた。その上で,Aが,無令状で,甲の携帯電話を操作して,そのメモリーの内容を精査したとこ

ろ,同携帯電話のメモリー内に覚せい剤の仕入先と思われる人物からの受信電子メールが保存されており,同メールに,翌日の某所におけ

る覚せい剤売買の約束と思われる記載があった。
 そこで,Aが,同メールに記載された日時に待ち合わせ場所に赴いたところ,乙が近づいてきたので,Aは,乙に対して,甲を名のった

上で「約束の物は持ってきてくれましたか。」と言った。すると,乙は,Aを甲と誤認して,覚せい剤を差し出したので,Aは,乙を覚せ

い剤所持の容疑で現行犯逮捕した。
 以上のAの行為は,適法か。


1,覚せい剤譲渡容疑での携帯電話の差押えに端を発する一連の捜査手続の適法性
  ・令状主義 
  ・220Ⅰ②の趣旨・要件→逮捕する場合、逮捕の現場、差押え、包括差押え
 

2,差押えにおける証拠物と被疑事実との関連性
  ・220Ⅰ② 差押えの物的範囲
  
3,押収物についての必要な処分
  ・メモリーの内容精査
  ・218条、憲法35条に抵触
  ・もっとも1条の趣旨
  ・例外の要件
 

4,任意捜査の適法性の判断基準
  ・おとり捜査
  ・強制処分か(197Ⅰただし)
  ・1条
  ・憲法31条、捜査比例の原則とその要件①②

以上

民訴17年第2問


第 2 問
 甲は,A土地を所有していると主張して,A土地を占有している乙に対し,所有権に基づきA土地の明渡しを求める訴えを提起し,この

訴訟(以下「前訴」という。)の判決は,次のとおり,甲の請求認容又は甲の請求棄却で確定した。その後,次のような訴えが提起された

場合(以下,この訴訟を「後訴」という。),後訴において審理判断の対象となる事項は何か,各場合について答えよ。
 1  甲の請求を認容した前訴の判決が確定したが,その後も乙がA土地を明け渡さないため,甲は,再度,乙に対し,所有権に基づきA

土地の明渡しを求める訴えを提起した。
 2  甲の請求を認容した前訴の判決が確定し,その執行がされた後,乙は,自分こそがA土地の所有者であると主張して,甲に対し,所

有権に基づきA土地の明渡しを求める訴えを提起した。
 3  甲の請求を棄却した前訴の判決が確定した。その後,丙が乙からA土地の占有を譲り受けたため,甲は,丙に対し,所有権に基づき

A土地の明渡しを求める訴えを提起した。


小問1
(1では,既に執行力のある勝訴判決を得ている原告の再訴が訴えの利益を有するかどうかを踏まえて論ずべきである。)
1,訴訟物は同じである。既判力は及ぶ。114Ⅰ。積極的効力・消極的効力の意味。既判力の客観的範囲。既判力の時的限界。 
2,訴えの利益は?→原則ない。もっとも、例外あり、基準時以後の事情変更のみ。
 

小問2
(2では,前訴の訴訟物と後訴の訴訟物の関係を論じた上で,前訴の確定判決によって審理判断の対象が制限されるかどうか,制限される

場合にはいかなる理由によるかを論ずべきである)
1,訴訟物が違う。
2,既判力が及ぶか→主文にあらず、及ばない。本問は理由中の判断につき争い→信義則で処理→前訴の判断を前提に審理判断、基準時以

後の事情のみ
 

小問3
(3では,原告敗訴の事案であることを踏まえて,係争物の占有の承継と既判力の拡張の関係を論ずべきである。)
1,訴訟物は違う
2,既判力は当事者でないので及ばない(相対効の原則115Ⅰ①)→承継人まで及ぶか→115Ⅰ③にあたるか、その趣旨。→敗訴判決の潜脱防止。紛争解決の実効確保。→手続保障のフォロー→広く当事者適格を承継した者→既判力の生じた前訴の判断を争えず、基準時以後の事情の変更のみ
 
以上





民訴17年第1問

第 1 問
 控訴審における攻撃防御方法の提出に関する民事訴訟法の規律とその背景にある考え方について,第一審と控訴審との関係を踏まえて,論ぜよ。


1,控訴審における
 →(現行法における控訴審が続審)
 
2,攻撃防御方法の提出に関する民事訴訟法上の規律
 →条文、①156条・157条、時機に遅れたの意味解釈、控訴審においては一審よりも厳しいと解す②301条。いずれにしても控訴審のほうがより厳しめ

3,その背景にある考え方について、
 →(口頭弁論の一体性も第一審と控訴審とを通じて観念される結果,当事者は控訴審の口頭弁論終結まで新たな攻撃防御方法を提出できることとなるが,これを貫くことにより生ずる第一審の軽視,形骸化という弊害を避けるため。)→当事者の意思の尊重と円滑迅速な訴訟運営の確保の要請との調和ではないか。

4,第一審と控訴審との関係をふまえて論ぜよ
 →(控訴審における新たな攻撃防御方法の提出につき,時機後れか否かはどのように解釈されるか,いかなる要件の下で説明義務が課されるか,その懈怠がどのような意義を有するかを論ずべきである。)→控訴審が第一審の判決の内容の当否を審理するというような関係ではなく、両審が同様の役割を担う一体の関係にある。
   
以上

やっと出会えた

 今日も鴨川ホルモーについて語らせてもらう。
 
 主人公のアベ君であるが、非常に親近感をもてるキャラである。
 
  
 この主人公アベ君は京大に2浪で入学し、葵祭路頭の儀のエキストラバイトに参加して、そのバイトの帰り道で「第499代京大青龍会会長スガマコト」氏の勧誘を受けて、訝しく思いながらも、同じくその場で勧誘を受けた経済学部、帰国子女枠入学者のタカムラとともにかなり遅い新歓コンパに参加し、その場で出会った「サワラリョウコ」なる、鼻フェチの彼にとって完璧な鼻の持ち主である文学部新入生に一目惚れをしてしまう。
 
 その後の彼は、この鼻美女に会うが為だけに、この宗教サークルとも、自己啓発サークルとも得体のつかめない謎の「京大青龍会」にせっせと参加していく。
 
 そんな彼の純粋(?)な想いとは裏腹に、鼻美人サワラリョウコは、同じく青龍会の1年生法学部の夜郎自大な自尊心男のアシヤに一目惚れをし、彼の一途な想いも伝わることのないまま、二人(サワラとアシヤ)は付き合いだしてしまうのだが、さだまさしを心の師匠と崇めるアベはそのことを全く知ることのないまま2回生となる。他のサークル部員は全員が2人の関係を知っているというのに!
 
 ここで夜郎自大な自尊心男、アシヤであるが、いかにも法学部にいそうなタイプの、司法試験に挑戦していそうなタイプの、ほとんどの読者が嫌悪感を抱かざるを得ないキャラである。その、さわやかな外見とは真逆の陰険で執着心の強い性格を、外見はけっしてさわやかとはいえないが、内面的には常に外部に開けた気風を保持しているつもりのアベは早々に見抜いていた。
 
 しかし、あくまでフェアな彼は、そんなアシヤを「学内随一の男前」と認めてはいる。
 
 好きになった女性の前ではほとんどうまく話せないところなど、多くの読者が共感するところではないか。俺はまんま同感するぞ。
 
 けっして人嫌いではないが、緩慢な人間関係を避け、人なっつこい振る舞いを嫌う、シャイなあんちくしょう、アベ。
  
 いいね~。

 
 さて、タカムラであるが、俺はこのような男とはたぶんそりが合わないと思う。しかし、なぜか、いつのまにか一緒にいるはめになってしまうアベと同じパターンでよくこのような男と友達になってしまう自分を哀しいと思うことがある。
 
 この男、タカムラ、今時、どこで買ったかわからないような、近藤勇のプリントTをジーンズの中に入れて、黒い革のベルトをして、イカキョーな格好をしていて、事あるごとに賢しらな知識をひけらかそうとする困ったやつである。
 
 しかも、ホルモー初戦で致命的なミスを犯した彼は、そのペナルティとして、大事にのばしていた惣髪を切られ(もっとも実際は自分で切るのだが)、ちょんまげになってしまう。
 
 そんな、彼をアベはどうしてもうとましく思ってしまう。
 
 しかし、ホルモー初戦でミスッたタカムラを罵るように責め立てるアシヤに対して、アベは敢然とタカムラを擁護し、アシヤにくってかかるシーンがある。当のタカムラはなにも言わずに肩を落としながら自転車に乗ってその場を去っていく。アシヤに髪の毛を押さえつけられながらも、そのタカムラの去る姿を視界に捉えて、タカムラに対する切ない思いをこらえきれず、涙するアベ。
 
 なんていいやつなんだと思う。
 
 俺はこの作品の随所で感じる、この作家の人柄の良さを、やっと出会えた友人かのごとく自然と迎え入れたいと思った。
 
 

ホルモー①

 鴨川ホルモーを皆さんはご存じか。
 
 ホルモンではない、そこは最後を「ん」ではなく「モー」とのばして読んでいただきたい。
 
 なんて感じではじまる、この「鴨川ホルモー」久々のマイブームの訪れである。
 
 しばらくはこのネタで楽しめそうだ。
 
 この物語のどこをどう気に入ったかは、一言で表現することは難しい。
 
 まず第一に、この作品の底流に流れている、ある種の清々しさに共感してしまった。フェアな精神、とでも言うのだろうか。
 
 第二に、大学生活を題材とする物語は数多くあれど、こんなにほほえましく読ませてくれる文体はそうなかなかお目にかかれない。
 
 第三に、ホルモーという一見荒唐無稽な存在について、読み進むほどに、実際にあったらおもしろいな、いや、実はあるのかも、とまで思わせてしまうところ、作者の類い希な力量を感じざるを得ない。
 
 第四に、終わり方がなかなか素敵だ
 
 そして最後に、京都を舞台にしているところか。
 
 最後は蛇足だが、京都を題材にするのは、実は簡単なようで非常に難しいと思う。それは、音楽アーチストが「さくら」を題材にした曲を出せばそこそこ売れることはわかってはいるけれども、それだけに安易には作れないような、作ってはいけないような、そんな不文律があるような気がするのは自分だけであろうか。
 
 
 
 

許す

 全てを許すことから始まる気がした

 

 今日も日本晴れだ

 

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