来客は、無事に帰宅しました。
ということで、昨日の続きをいきたいと思います。
これは、ある惑星のとある国。某所にて行われた行政書士試験に関する会議である。
(フィクションです。)
A:むぅ。行政書士試験の制度改正を行ってから、もう13回の本試験が終わったな…。
毎年のように19問も出題しているせいで、ネタがなくなってきてるんじゃないか?
B:そうっすよね。最高裁の方で頑張って新しい判例バンバン出してもらわなきゃ。タマがもうないっすよ。
C:いえいえ、そんなこともありませんよ。我々には、悪魔のような出題方法が1つあるじゃないですか。
A:え、何それ。どうせあれでしょ?重箱の隅を突くようなことを聞けばいくらでもあるとかそういう話でしょ?
あれやると、受験生が怒るのよ。なんなんこれ的な。いや、もっと言えば、あれよ。
予備校講師がさ、調子に乗って問題文を批評してくるでしょ?あれ、面倒くさいのよ。
C:いえいえ。基本が分かっている受験生ならばきちんと判断できるが、適当に勉強している受験生が解けないような良い出題方法があるんですよ。答えは、「すり替え」と「架空」です。
B:あー、あの手ね。そうそう。平成20年度以降くらいから結構使っている手法だけど、あれって結構正答率を下げてくれるよね。Cさんさ、前どんな問題作ったんだっけ?
C:平成29年度に、正答率50%まで下げる秀逸な問題作ってやりましたよ。
行政指導の相手方は、当該行政指導が違法だと思料するときは、行政不服審査法に基づく審査請求によって当該行政指導の中止を求めることができる。(H29-14-4)
A:あー、あれか。あれは確かに秀逸だったわ。行政不服審査法は、処分・不作為・継続的性質を有する事実行為が対象だから、行政指導の中止が規定されているわけがないんだよね。行政手続法の規定だったことや行政不服審査法の対象をきちんと理解している人だったら、ちゃんと判断できるわけね。いいじゃん。すり替え。もっとやろうよ。行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法・国家賠償法をゴチャゴチャにすり替えたら、結構悪魔の出題になるんじゃない?何万通り作れるんだろう。うはーテンション上がるわ。
B:あー、あとあれでしょ。架空条文。あれ、秀逸だよね。ありそうな規定を適当に作って、「ありますか?」って聞けば良いだけだもんね。適当に勉強して、適当に記憶している受験生だったら混乱するわけか。
C:そうそう。去年、結構秀逸な問題作ったんですよ。
代執行を行うに当たっては、原則として、同法所定の戒告および通知を行わなければならないが、これらの行為について、義務者が審査請求を行うことができる旨の規定は、同法には特に置かれていない。(H30-8-2)
行政上の義務の履行確保に関しては、同法の定めるところによるとした上で、代執行の対象とならない義務の履行確保については、執行罰、直接強制、その他民事執行の例により相当な手段をとることができる旨の規定が置かれている。(H30-8-3)
B:あ、それすごく良い問題だったよー。行政代執行法なんて6条しかないのに、どうやって問題作るんだよ。ってちょっと内心思ってたんだよね。適当に架空の条文作って、「はい、6条の中に規定されてましたか?」って聞けば、細かいことはともかく、ちゃんと条文を読みこんできた受験生か否か判定できるもんね。
C:そうなんですよ。ということで、この「すり替え」と「架空」さえあれば、結構無限に問題作れるんですよね。
A:えー、でもさぁちょっとワンパターンじゃん?もうちょっとさ、バラエティに富んだ問題作れないの?
C:Aさん、少しは自分で考えてみたら良いと思いますよ。去年、新たな試みで、判例の理由部分をいじった問題作ったじゃないですか。
公営住宅の使用関係については、一般法である民法および借家法(当時)が、特別法である公営住宅法およびこれに基づく条例に優先して適用されることから、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用があるものと解すべきである。(H30-9-9)
B:おー、そうでした。今までは、判例の結論だけを聞く問題を作ってたんだけど、理由が変なことになっているから×というのは初めての試みだったよね。
C:これは、今後も続けていこうと思います。行政事件訴訟法の訴訟要件辺りでいっぱい作れそうなんで。
A:でーもーさー。それって、判例の「事案→結論」って照合されて、2択とかになったら、理由部分を簡単に検討されてすぐに答え出されちゃうじゃん。テクニック解法身に付けているやつが有利にならん?
C:いや、そういう解法を学んでいることが勉強していることにもなるんじゃ…まぁいいでしょう。実はですね、予備試験・司法試験の問題で興味深い出題方法があるんですよ。これ使えば、また無限に問題作れますよ。しかも、基本知識だけで答えが出せるような秀逸な問題ですよ。
B:さすが、Cさんは研究熱心ですね。
C:それはですね…、あぁ会議に夢中でコーヒー冷めちゃいましたね。淹れなおしてきますよ。続きはコーヒーを入れてから。
おぉ…何かすごく長くなりました。「小説で読む行政法の過去問分析」とかいう本でも書きたいくらいです。
さて、Cさんが見つけた新たな出題方法とは…何でしょうか。長くなったので、次回に続きます。
いずれにしても、ABCの会話から分かる通り、行政書士試験における行政法の出題は、先生方の優しさすら感じます。細かいことは別に覚えてくなくていい。基本的なことをかっちりと理解して記憶をしてくれ。そして、それを使ってちゃんと自分の頭で考えて解いてくれ。そんなメッセージがこもっているように思います。
なお、繰り返しますが、上記の会話は、あくまでもフィクションです。