「童美連 絵本サロン2016・田畑精一さん、杉浦範茂さん講演会」の開催 | 後藤 仁(GOTO JIN)の日本画・絵本便り

後藤 仁(GOTO JIN)の日本画・絵本便り

後藤仁ブログ2~絵師(日本画家・絵本画家、天井画・金唐革紙)後藤仁の日本画・絵本・展覧会便り。東京藝大日本画卒,後藤純男門下。「アジア/日本の美人画」をテーマに描く。東京藝大,東京造形大講師。金唐革紙製作技術保持。日本美術家連盟,絵本学会,日中文化交流協会会員。

 2016年4月6日(水)は、日本児童出版美術家連盟(童美連)事業部企画・主催の「童美連 絵本サロン2016」が開催されました。

 会場に行く前に、東京藝術大学日本画専攻の先輩で加山又造先生(文化勲章受章者)のお弟子さんの佐藤宏三さんの「佐藤宏三 日本画展」(丸善丸の内本店)に寄りました。現在は無所属で活動されているという事ですが、確実な描写力による伸びやかな風景画は魅力的です。お会いするのは学生時代以来の実に20数年ぶりでしたが、佐藤さんの人の良さは、学生時代の印象のままでした。
 ここ丸善丸の内本店では、私も2014年3月に「後藤 仁 絵本原画展」を開催しています。→ http://ameblo.jp/gotojinjapan/entry-11778061201.html


東京駅「東京駅」 この日も中国の観光客がたくさんおりました。

佐藤宏三 日本画展「佐藤宏三 日本画展」(丸善丸の内本店) 佐藤宏三さんと私


 次に、銀座の教文館ナルニア国に寄って、注文していた杉浦範茂(はんも)さんの作画絵本『サンタクロースって ほんとに いるの?』(福音館書店)と、『母の友4月号 特集:創刊60周年「こどものとも」の世界』(福音館書店)を購入しました。ナルニア国ギャラリーの「こぐま社50年のあしあと展・絵巻えほん特別展」の黒川みつひろ さん、馬場のぼる さん達の作品を再び鑑賞。いつ見ても、楽しくて良い絵です。

童美連 絵本サロン「童美連 絵本サロン」 リーフレット


 銀座の食堂で安いカレーを胃に流し込んで、日本児童出版美術家連盟 事業部企画・主催「童美連 絵本サロン2016」 ─ 田畑精一さん、杉浦範茂さん講演会に向かいました。
 張り切って30分以上前の一番早くに会場に着きましたので、購入したものと図書館で借りたお二方の絵本を読んでいました。

 人々が続々と集まり、田畑さん、杉浦さんも到着し、計47名と今まで私が参加した中で最も多い童美連の絵本サロンになりました。
 最初に田畑精一さんのお話です。不朽の名作絵本『おしいれのぼうけん』(童心社)を中心に、絵本制作のエピソードを優しく面白く語られました。ひょうひょうとした話しぶりの中にも絵本制作への情熱が感じられます。田畑さんは大阪生まれ兵庫育ちという事で、私は兵庫生まれの大阪育ちなので、育った環境が似ていて親近感がわきます。
 次に杉浦範茂さんのお話です。杉浦さんは東京藝術大学図案科卒業なので私の大学の大先輩に当たります。多くの絵本作品の他、『絵本の絵を読み解く』(NPO読書サポート)といった絵本評論本も書かれており、本の装丁家としてもご活躍されています。
 少し休憩して、対談が始まりました。気心が知れたお二人の対話は、ひょうひょうとして実に楽しげです。常日頃、杉浦さんが田畑さんの絵本の中の間違い探しをするというエピソードが面白かったです。

 質疑応答では、童美連新人にもかかわらず、私はいつもながらご質問しました。こんな大切な機会に何も質問しないのは、一生もったいない悔悟を残しますので・・・。
 前に、童心社会長の洒井京子さんの講演会で、田畑精一さん、古田足日(ふるた たるひ)さんとの思い出話を聴き、三位一体の獅子奮迅の姿勢で『おしいれのぼうけん』を制作した事や、洒井さんが本当に作家を信頼して制作依頼をされた事を知り、実にうらやましいほど良い環境であった事を感じ、それでこそあの時代に良い絵本作品が生まれて来たのだと確信しました。当時の機運は、新しい良いものを創ろうという気概にあふれていたのでしょう。
 それに比べて、現在の私の体験や、童美連の中堅・若手の方から伺う制作環境、編集者と作家の関係性に大きな疑問を感じていたから、その様な類のご質問をしました。確かに時代の必然も大きく作用しているのでしょうが、ビジネスだけでは何も語れない。「作家と編集者が魂と魂を本気でぶつけ合う」・・・この様な命懸けの創作姿勢がなくて、今後、本当に良い「絵本」や「絵画作品」は生まれて来るのでしょうか? 私は大いに懐疑的なのです。
 これらの疑念は、「日本画家」と「画商・画廊主」との関わりの中でも、20年にわたり疑問に感じて来た事なのです。・・・・


童美連 絵本サロン田畑精一さん(右)と杉浦範茂さん(左)の固い握手

童美連 絵本サロン田畑精一さん、杉浦範茂さんの対談。 右には、事業部部長の高木さんご さん、副部長の石川日向(ひゅうが)さん、お二人の企画力には頭が下がります。

童美連 絵本サロン田畑精一さん、杉浦範茂さんの対談。 絵本『おしいれのぼうけん』を手に。この絵本には、後でサインを入れていただきました。 (^◇^)


 その後、いつものお店で二次会がひらかれ、私は毎度参加して、諸先輩方のお話を聞くのです。せっかく多くの作家にお会いできる機会です。かしこまったテーブルでの話だけではなく、酒でも酌み交わしながら語る中に、人々の本音や思いが垣間見れる時も多々あるのです。
 二次会でも、本当はもっともっと田畑さんと杉浦さんに、絵本制作の裏話や藝大時代のエピソードを聞きたかったのですが、今回、上座は先輩方にお任せし、同年代・少し先輩の方々とお話ししました。
 こうしてこの日も、夜まで絵本談義に花が咲いたのでした・・・。

  日本画家・絵本画家 後藤 仁