ミャンマー(ビルマ)写生旅行 その4 | 後藤 仁(GOTO JIN)の日本画・絵本便り

後藤 仁(GOTO JIN)の日本画・絵本便り

後藤仁ブログ2~絵師(日本画家・絵本画家、天井画・金唐革紙)後藤仁の日本画・絵本・展覧会便り。東京藝大日本画卒,後藤純男門下。「アジア/日本の美人画」をテーマに描く。東京藝大,東京造形大講師。金唐革紙製作技術保持。日本美術家連盟,絵本学会,日中文化交流協会会員。

 (その3からの続き)
 10月15日、旅行14日目。旅もはや半ばです。今日は前日に予約しておいた乗り合いワゴンカーで、カローからマンダレーに向かいます。11:00にミャンマー人が10人ほど乗ったワゴンに乗り込み、途中2回の休憩をはさみながら、マンダレーのホテルに夕方6:00ごろ到着。ワゴンカーはきれいで乗り心地も良かったです。一人一人を目的地に下ろすので、マンダレーに入ってから1時間ほどかかりましたが、ホテル前まで行ってくれるので助かります。
 ガイドブック(地球の歩き方)で調べておいた、ナイロン・ホテル(一泊朝食付 15ドル、部屋にはトイレ・温水シャワー付)という宿に飛び込みでチェックイン。受付の強面のおっちゃんの言う「See The Room.(部屋見てみるか)」が聞き取れなくて、2~3度聞き返すと怒リ出す始末(私の英語力も拙いのですが、ミャンマー人の英語もたいてい発音が良くないのです)。客に対してどうなっているんだ・・・と思いつつ、マンダレーの街に一抹の不安が・・・。

 16日、旅行15日目。レンタルサイクル(一日2000K)を借りて、マンダレーヒルを目指す。マンダレーの街は車が多くて、自転車に乗る人は注意が必要です。マンダレーヒルに着くと、入口の巨大なライオン像(チンテーヂーナッカウン)から階段を登る。チェードーヤ・パヤーピーロンチャンター・パヤーを通り、ビャーデイペー・パヤーに着く。マンダレーヒルは山全体が仏教の聖地になっており、参道階段の途中途中に多くのパヤーがあるのです。ビャーデイペー・パヤーには「予言を与え給う仏陀」像があり、高さ約8m巨大な黄金のブッダが前方に指をさし、横に弟子のアーナンダーがひかえているという珍しい像です。その上に進むと、日本人慰霊碑(戦没者慰霊碑)、ンコンミーン・ストゥーパ(可愛らしいウズラの像がある)、サンダームキ(ブッダに自分の乳房を差し出す女鬼の像)があります。
 そこから階段を上ると、頂上のスタウンピー・パヤー(カメラ撮影料1000K)です。ここからマンダレーの街並みが遠くまで見渡せます。裏手には、ムイヂーナッカウンという2匹の巨大コブラ像があり、多くの人が参拝しています。なかなか面白いこの丘で、4時間ほど過ごして下山しました。



ミャンマー旅行
 ビャーデイペー・パヤー 「予言を与え給う仏陀」


 マンダレーヒルのふもとにも寺院が幾つかあります。まず、チャウットーヂー・パヤー(入場無料)で巨大な大理石の仏像を拝み、サンダムニ・パヤー(入場無料)では1774基あるという真っ白い小仏塔を見て、クドードォ・パヤー(入場無料)で729基の小仏塔と中央の巨大な黄金仏塔を拝見。そこから、シュエナンドー僧院に移動。ここで、マンダレー入域料10000Kを支払いました(マンダレーとその近郊の主な見所に入れる。同じ場所には一回のみ入場可。有効期間一週間)。シュエナンドー僧院は古い木造寺院で、細密な木彫が残されており、とても優れた建築物です。外壁の美しい彫像をスケッチ。隣のアトゥマシー僧院に立ち寄る。



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 シュエナンドー僧院

 ミンタ・シアターという所でミャンマーの伝統舞踊公演が見られるというので予約しに行くと、一年前に閉館したと言う。近くのガーデン・ヴィラ・シアターで「マンダレー・マリオネット・アンド・カルチュラル・ショー(操り人形劇)」(約1時間、10000K)が開催されるので、一番良い席を予約しました。その後、遅い昼食をトゥー・トゥー・レストラン(フィッシュカレー、約3000K)で取り、一度ホテルに戻って休憩です。
 旅行中、毎日夜9:00過ぎには寝ていた私は、ショー公演が夜8:30からと遅いので、時間を費やす為に街を散策。ダイヤモンド・センターという最新のショッピングセンターで、ミャンマーの現在の経済発展を確認。既にタイ王国等と同じ位に、都会の中心部は発展して来ています。ここで巻きずしの様な物とフルーツを買って夕食にしました。ショッピングセンターの入り口わきで、めしをほお張る怪しげな外国人がいるというので、警戒した警備員が見に来ました。
 そうこうしている内に、ようやく8:00を過ぎて「マンダレー・マリオネット・アンド・カルチュラル・ショー」に向かう。夜の街を自転車で走るのは少々危険。レンタルサイクルは電灯が付いていない場合がほとんどなので、懐中電灯を点灯しながら走ります。「マンダレー・マリオネット・アンド・カルチュラル・ショー」は人間国宝級と見られる老齢のリーダー中心に、4~5名の操り手が人形を操ります。音楽も伝統楽器の生演奏で、ビルマ竪琴(ミャンマーハープ)演奏・伝統舞踊も交えた、とても満足いく公演でした。15名ほどの見物客は全て欧米人で、東洋人やミャンマー人はいません。現在は観光客への公演が中心の様ですが、この様な高い技術の伝統文化が生きている事に感動しました。
 ホテルまで自転車で30分近く夜道を帰る。旧王宮の堀の周囲の道路を走っていると、若者が数人ふざけてケンカをしています。危ない感じの奴らだなと、速やかに脇を通り抜ける。その時、突然1m以内までその若者の一人が駆け寄って来て、何やら罵声をあびせてきました。とっさの事に「やられる!」と血の気の引いた私は、自転車をこぐこぐ─。かなりのスピードで走りながら10mはついて来ました。若者はすごい剣幕ながら、顔はにやけ笑いを浮かべており、ふざけている様でした。しかし、完全にラリッている感じで、危ない若者達です。夜のマンダレーは少し危険です。



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 「トゥー・トゥー・レストラン」 フィッシュカレー等のビルマカレーが美味しい


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 マンダレー・マリオネット・アンド・カルチュラル・ショー



 旅行16日目。朝から旧王宮(入場無料)を見物。建物は再建された新しいものですが、いにしえの王宮を彷彿とさせます。周囲の城壁のみ昔のものだそうです。旧王宮内の見学エリアは制限されており、ほとんどの区域はミャンマー軍の敷地で入場・撮影不可です。
 その後、自転車でかなり走って、マハムニ・パヤー(ヤカイン・パヤー)(カメラ撮影料1000K)に到着。ここの仏像はマンダレーで最も有名だそうです。高さ約4mの黄金のマハムニ仏は威厳を持って鎮座していました。信者が貼りつけた金箔でゴワゴワに膨れ上がっていますが、それでも独特の存在感はすごいものです。女性は10m位までしか近寄れませんが、男性は仏像の裏にまで回れます。ただし、手荷物は前もって預けておかないといけません。私も仏像の正面から裏を抜けて参拝し、その後、正面から30分ばかりかけて仏像をスケッチしました。監視員に注意されるかと思ったのですが、写真撮影・スケッチ・長時間のお祈り等は問題ない様です。この後、各地でミャンマー人にこのスケッチを見せると、たいていの人はすぐにマハムニ・パヤーだと分かりました。たぶん、日本人にとっての奈良の大仏の様な存在なのでしょう。
 そこから移動して、シュエインピン僧院(入場無料)へ。ここも古い木造寺院が残っていますが、かなり老朽化しています。それでも内部の木彫は優れたものが残っており、スケッチしました。
 次にキング・ガロンという金箔工房を見物。仏像に貼ったり工芸品に使う金箔を製造しています。驚く事には全て手作りで、金箔を伸ばす作業も若者が金づちでたたいています。大きさは日本の金箔の4分の1位(5㎝角)で、品質は少し落ちるとは思います。しかし、現在の日本では機械で打ち伸ばしますので、現在でも全て手作業だとしたら、この金箔は品質以上に尊いものかもしれません。日本画では金箔を多用しますので私の関心も高く、サンプルとして5㎝角10枚つづりの金箔を購入。この量で7000Kですので、観光客価格でしょうが、日本の金箔よりわずかに高い位です。



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 マハムニ・パヤー


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 「キング・ガロン金箔工房」 金づちで金箔を伸ばす

 明日、10月18日はマンダレーからバガンに移動します。ガイドブック(地球の歩き方)ではバガンまで長距離バスで11時間位となっていますが、たいていそれより1~2時間は多くかかります。10年程前にひどい腰痛(ぎっくり腰)を患った私は、年に1~3回は再発するので、バス移動は要注意です。今まで海外旅行で10時間位のバス移動の経験はありますが、バガンでのハードそうな取材も考慮して、今回、エーヤワディー川のリバークルーズ(船旅)を計画してみました。
 前日17日にマンダレーのMTT(ミャンマー・トラベル&ツアーズ、ミャンマー国営旅行社・ツーリストインフォメーション)でマリカ・リバークルーズのエクスプレス(マンダレーからバガンまで約9時間、43ドル)を予約。英語でのやり取りが難しかったですが、受付の人は丁寧で良かったです。結構高めの移動費となりますが、私の旅としては珍しく優雅な船旅となりそうです。

 マンダレーの食事では、上記の「トゥー・トゥー・レストラン」の他、ナイロン・ホテルの近くの「櫻花レストラン」のシャンヌードル(2000K位)や、「ナイロン・コールド・ドリンク」のアイスクリーム(1200K位)が安くて美味しかったです。

 ミャンマーの古都・マンダレーは、寺院等の観光資源は極めて優れています。ただ、比較的治安の良い印象のミャンマーですが、マンダレーに関しては少々治安と交通等への注意がいる様に感じました(ヤンゴンの観光客が多い地域も少し注意が必要。スリ・勧誘・詐欺など)。日本も同じですが、インレー湖・カロー等の田舎に比べて、マンダレー等の都会は人心がサバサバした雰囲気で、やはり私は田舎が好きです。イメージが微妙なナイロン・ホテルは残念ながら、チップ無しです。
 明日は、バガンまでのリバークルーズが楽しみです。そして、いよいよ前々から訪れたかった世界三大仏跡・バガン遺跡取材です。この様子は、また次回といたしましょう。

  日本画家・絵本画家 後藤 仁