日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -53ページ目

休日〜飲酒、DVD、そして

奇妙な夢だった。


酷く古い家に、俺は一人で住んでいた。


すべての柱が黒く光り、


どう見ても百年以上は経っていると思えた。


まるで城のような佇まいで、

三階建てで、きれいな屋根の形をしていた。


最上階からの眺めは最高だった。


どこかで観た事のあるような眺めだった。

多分、

学生の頃、住んでいた町並みだろう。

いや、

違うかな。


とにかく、

ひとりぼっちだった。


過去も、

現在も。

そして、

夢の中でも。


目覚めると、


俺は水割りを煽った。



もう、たくさんだ。


死ぬ勇気もなく、

つまらない仕事から逃げ出す勇気もなく、


日々の生活でいっぱいいっぱいで、


娘に養育費さえも払えない。


これじゃあ、


生きる価値ってものが、無いじゃないか。


三杯目の水割りを飲み干し、


十円レンタルで借りて来た、

残り二枚のうちの一枚をパソコンに突っ込んだ。


幸せの一ページという映画だった。

幸せの1ページ [DVD]/ジョディ・フォスター,アビゲイル・ブレスリン,ジェラルド・バトラー

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海洋学者が娘と二人、


無人島で暮らす話だった。


なんだか理想の生活のように思えた。


太陽電池でパソコンはネットにつながっているし、

数ヶ月置きには、雑誌などの生活物資は、

船で送られてくる。



なんて現実的な話なのだろう。


観ている方も、安心して観ていられる。



仕事は想像以上に俺を摩耗させた。


日勤でたっぷり残業をし、

二十一時に仕事を終え、二十二時に帰宅すると、

もうそれだけで、

何かをやる気力は残っていなかった。



唯一、


休日に何かをやるのだ。


それが、


このざまだ。



誰か優しい女の子が手を差し伸べてくれて、


一緒に水割りを飲んでくれたら、


どんなに、救われるだろうか。




こんな状態では、

もう、


終わってるな。


この俺は。

詩 「すり減った瞳」

そいつの瞳は濁っていた。

まだ若いのに。

まるで老人の瞳のように、

うっすらと白濁してた。


いったいどうしたってんだ。


かわいそうに。


そいつはとてもいいやつだった。

とても不憫だった。



何故?

それは定めです。

受け入れなさい。


悔い改めなさいだって?


いい加減にしてくれよ。



俺はあるとき、

そいつの白濁した瞳の訳を知った。


そいつは一日中、

八時間、

いや、時には十二時間以上、


まぶしいくらいの光源を、


レンズを通して見つめ続けたのだった。

延々と、

うんざりするくらいに。


いったい何のために、

そんな馬鹿げた事を、

したってんだい?


それは資本家のために、

会社のために、

品質向上のために、

くそったれどもの利益のために。


大事な眼を酷使して。



もうたくさんだ。


俺たちは、あんた達から金をもらって、

飯を食っている。


それでも、

もうちょっとましな扱いは出来ないものか、と考えてしまう。


俺たちは、豊かではないが、


奴隷じゃねえんだよ。

映画の楽しみ方

映画を得意になって評論するやつらに、映画を楽しむ事など絶対にできはしない。

当たり前じゃないか。

批判的な目で、

話の筋がどうだ、

美術がどうだ、

GCがしょぼいだ、

オチが下らないなどと、

クソくだらない揚げ足取りに終始していては、

物語に没入出来るはずが無い。

どんなにくだらない話で、

低予算で、

馬鹿げた映画だって、

人ははまれるものなのだ。

人間とはそう言う生き物だ。

感情移入。

それは、人と動物を分ける高度な能力の一つだ。


俺は映画を観ると、

いつだって物語に没入出来るし、

主人公に自分を投影し、

短い時間の間、酔いしれる事が出来る。

現実逃避だって?

馬鹿をいわないでくれ。

幾ら俺が愚か者だも、

映画と現実をはき違えるほど、

ぶっ飛んでない。

今のところは、

だが。


現実と虚構をはっきりと区別した上で、

そのときだけは、

涙を流したり、

笑ったり、

怒ったり。


それは、

映画の世界に自分がインストールされた証だ。



大いに結構だと思わない?


それとも、

子供っぽい?