詩 「すり減った瞳」 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

詩 「すり減った瞳」

そいつの瞳は濁っていた。

まだ若いのに。

まるで老人の瞳のように、

うっすらと白濁してた。


いったいどうしたってんだ。


かわいそうに。


そいつはとてもいいやつだった。

とても不憫だった。



何故?

それは定めです。

受け入れなさい。


悔い改めなさいだって?


いい加減にしてくれよ。



俺はあるとき、

そいつの白濁した瞳の訳を知った。


そいつは一日中、

八時間、

いや、時には十二時間以上、


まぶしいくらいの光源を、


レンズを通して見つめ続けたのだった。

延々と、

うんざりするくらいに。


いったい何のために、

そんな馬鹿げた事を、

したってんだい?


それは資本家のために、

会社のために、

品質向上のために、

くそったれどもの利益のために。


大事な眼を酷使して。



もうたくさんだ。


俺たちは、あんた達から金をもらって、

飯を食っている。


それでも、

もうちょっとましな扱いは出来ないものか、と考えてしまう。


俺たちは、豊かではないが、


奴隷じゃねえんだよ。