ガットハロのブログ’混石’ -52ページ目

Change of Heart

 ある日新たなアンプを開発すべく改造したフェンダーアンプをエンジニアに試奏させてもらった彼はこう言った。


 「このチビ助めっさブギー(魅力的な音の様子)しとるがな」


 後に世界を席巻するアンプメーカーとそのブランド名はこの時決まった。

MESA BOOGIE


 それから時は流れ、ギターの仙人としての地位を確立していた彼が愛用するギターメーカーへ一本の電話を入れた。


 「ヘイ、ポール。学生に買える値段でボクのと同じくらいイカしたギターを作れないかな、って思うんだ」


 美術品とすら呼ばれる高級ギターを製造するメーカーが、その日から新たなモデルの開発に着手した。

Paul Reed Smith Student Edition 略して PRS SE


 ストーリー及び言葉遣いには多分に脚色が含まれております。話はんぶんのさらに半分くらいでお読みください。学生ではないけれど、おかげさまでPRS SEをメインに使用している宮下です。日の光も青く、ますますご発展のほどお喜び申し上げます。青くはねえよ。なんなんだろこの挨拶。


 さて、ポールリードスミスとメサブギーの組み合わせといえば、ごく一時期のごく一部ジャンルにてレスポールとマーシャル、ストラトとフェンダー並みの人気で一世を風靡した組み合わせである。そして真偽の程は定かでないが、この両メーカーの歴史に大いなる影響を与えたギタリストが


カルロス・サンタナ


である。である、って真偽定かでなく自信たっぷりに言ってはいけないが、誰にも迷惑はかかっていない(と思う)し面白いのでこれが私にとっての史実になっている。


 と、ここまで言っておいてなんだが、私はサンタナにそれほどの愛着があるわけではない。たしなむ程度のお付き合いである。しかし、ギターを購入する際、またはアンプの来歴を語る友人の話などやたらと顔を出すこのギタリストは、実にナイスなお騒がせ屋として私の脳にインプットされているのである。


 影響を受ける、といえば音楽に限らずファッション、文章、絵画他、様々な世界で用いられる表現である。「パクリ」という言葉の普及と共に、まねっ子が使う言い訳のように取られることもあるようだが、当然ながら誰もがいつでも、誰かから影響を受け、同時に与えてもいるのだ。あらゆる人の行動は、自分及び他人に、ひいては世界に影響を与えるべく行われている。


 ただ残念なことに、そうそう望みどおりには影響を受けられないのが世の常である。中学生の時分にモッテモテの友人がいたとして、いや、いたのだが、彼のようになりたいと思った結果、私の身に付いたのはよく手を洗うクセと宗田理の小説に夢中になることだけだったりする。手を洗うクセも悪くはないが、おそらく魅力的な男性像に必須ではなかろう。


 まあ当然、影響を受けてこうなりました、の姿を誇るには相応の努力が必要になるのだ。まずは価値観の軌道修正、次に修正された価値観に沿う自分の形成、という所まで努力の末にたどり着かねば傍目に変化は見えないのである。


 そしてより一層困難を極めるのが、影響を望みどおりに与えることである。大は国を治める方針から、小は好みの異性を射止めるアレコレまで、人は日々影響を与えるべく戦い続けている。そしてタバコが値上がりしてみたり、愛だよな、と満ち足りた笑顔で言ってみたりするのである。成功者に災いあれ。


 いじましい呪いをかけている場合ではない。私にはバンドというものがあるのだった。そうともこれぞ世界に発する我がメッセージ。君よ俺で変われ。聴く者全てに災いを。


 呪うなと言うのに。メッセージを発し、受け取ってもらい、その上で望み通りに影響を及ぼしたいが故のバンド活動ではなかったか。私が自分のバンドによって与えたい影響は2つ。


1)私たちが調子こくような褒め言葉をかける気になる他人の増加。
2)ラウドロック、インダストリアルロックのリスナーの増加(@恵庭)。


 1)に関しては、自分で言うのもなんだが悪くない目標ラインだと思う。ライブハウスどころかどこぞのローカルなお祭りに参加するだけでも達成できそうなところが良い。にもかかわらず拡大解釈するならバンドマン全ての偽らざる願いでもある。多分。


 2)は、はっきりと私たちには荷が重い。もとより音楽業界の広告戦術は任意のミュージシャンまたはジャンルに消費者を導くためにあるのだから、現在その筋の面々が光を当てていないジャンルを普及させるというのはかなりの無理がある。


 とは言え2)に関してだって、私たちの存在が認知される場所がどこかにできあがり、その区域内だけでもCDの売れ方に変動があれば目標達成でよいのだ。


 具体的には、私たちのライブがあった後、恵庭市内某所のレコード店 だけで、どういうわけかレイジやコーン、ライズや311がちょっと売れるようになれば大成功だ。ちょっと、の枚数が全部で5枚程度の増加だったとしても。要は、自分の好きな音楽の同志が欲しいだけである。友達や自分たちの動員に直接つながる人でなくてもよいから。


 実際のところ、どちらも達成可能かどうかは全く未知である。しかし、達成が不可能であろうが太陽がなんか北から昇ってこようがそれを理由に活動をストップする必要もない。これこそ趣味の強さである。


 と言うわけで、何かの理由でこの文を読んでしまった方へ。あなたは既に術中にあります。この文を読んだ後にはジャンルにラウドロックを冠したCDを1枚購入の上、ここまでの文章を書き直し、28人に宛てて郵送してください。前にCDを購入せず郵送もしなかった札幌市某区の何某さんは交通事故で…って、だから呪いじゃないっての。