Where's All The Money Gone
免許を落とした。保険証も一緒に落とした。ついでにキャッシュカードも落とした。身分を明らかにできるものぜーんぶ無い。法治国家日本における幽霊部員である。
仕事柄、車を運転できない私は首が無いのと同じなので、そしてどっちかというと保険証紛失も含めて首を落とされかねないので、その他カード類を差し止めた後あわてて交番に行く。あまりにあわててたので交番入口に輝く「交番」のローマ字が「小判」に見えたくらいだ。何とかならんかアレ。
「手稲の試験場なら即日再発行できます」
よし行こう今行こう。これが再発行の手引きですかはいはい頂きます。探せって?探したさコノヤロウ重箱のスミまでつっついたさ。さあ行こういざ手稲。
ということで、札幌駅付近に書類を持っていくついでに札幌市手稲区の運転免許試験場に行くことにする。缶コーヒー片手に恵庭駅から札幌駅へ。運転の必要が無い長距離移動は久々でとてもうれしい。ビバJR。みんなもJRに乗ろう。
さて、JRにコビを売ったのちに札幌(北区)に書類を届け手稲行きの切符を買い、元気に改札をくぐる。ここでふと気づいたのが
免許の再発行ていくらするんだっけ。
背中を冷たい汗が流れる。手稲行きの切符を口にくわえながら交番でもらった再発行の手引きを確認。
手数料:3650円(顔写真が無い場合試験場で撮影代金が必要です)
多めに見積もって諸費込み4、5千円か。手稲駅から試験場までのバス代と帰りの電車賃を合わせると7、8千円はあって欲しい。財布を開くと残金は。
残高:5732円
ヤバい。何がヤバいってギリギリ間に合いそうな金額なのがヤバい。改札を抜けた後なので今は手稲から恵庭までの料金は確認できない。
何でホームとかにも料金表貼らないんだJRのバカ。みんなが余裕で電車賃払ってる訳じゃないんだぞバカ。あと何であの時缶コーヒー売ったんだバカ。言ってやればいいじゃないか。「だいじょぶっスか」とか言ってやればいいじゃないか。
と、JRを逆恨みついでにさっき能天気にも缶コーヒー(120円)を買ってしまった恵庭駅の自販機にまで八つ当たりをしながら、私は必死で考えた。そして覚悟を決めた。
予定通り手稲に行く。仮に帰りの電車賃が不足しても恵庭まで乗り、不足分の金を家まで取りに行く。いざとなったら再発行された免許を駅に預けてでも。
落語か。熊さん八っつぁんか。こいつで一杯飲ましてくんねぇなってか。そんな三十代男性として何かが欠けた決意を胸に、私は手稲に降り立った。ここで帰りの電車賃を確認。恵庭までは810円。残金から逆算するとここより先使える金は4922円。写真撮影その他経費が1272円を超えれば手詰まりだ。
学生時代の記憶を頼りに移動手段を検討。JR手稲駅から試験場までは約2キロ。バスは金額的に危なくて使えない。よし歩こう。命が惜しければ一円たりと無駄にはできない。ならばいっそJR稲穂駅まで行った方が近かった気はするが今それを言っても始まらない。とにかく大事なのはたどり着くことだ。
無駄に切実な気持ちを本来なら不要な旅の道連れにして1時間近く歩き、札幌市手稲区は曙5条4丁目の札幌運転免許試験場に到着。写真は、写真代はいくらだ。
写真撮影代:600円(こちらで券をお求めください)
…オッケーだ。全てオッケーだ。試験場での経費は4250円。帰りの電車賃を確保した後の残金は672円。帰りは手稲駅までJRバスにも乗れる。ゴージャスじゃないか。ブルジョワジーじゃないか。
かくしてつつがなく免許は再発行。バスに乗って(180円)手稲駅へ。気が緩んだかまたしても缶コーヒーを買い(120円)、ゆったりお茶しながら手稲駅から恵庭駅へ。そして帰社。はい、最終残高は。
最終残高:372円
本日の教訓は「JRはとても便利」ということでよろしいか。ヨロシイカ。