Session
激狭い道をぶらぶら歩いていると、電気自動車が私の右45センチをゆーっくり…
通過した後に気付いた。「ふほっ」と声を上げて飛びのいた。運転手が苦笑いをしながら頭下げてた。わあびっくりした。
おそるべしは電気自動車である。ん?…ほうほう、三菱か。おそるべしは静かで快適、三菱電気自動車である。三菱は広告料を振り込むように。オレオレ、俺に。
詐欺さておき、噂にたがわず電気自動車はものすごく静かだった。もし跳ねられたとして跳ねられた私も無言で静かに路面をバウンドせねばならないような気がするくらいの静かさだ。腹とかフトモモとか、なるたけ柔らかいところでの接地を心がける。
電気自動車だけではない。ハイブリッドのハリヤーを走らせた時も、あまりに静かでエンジンがかかっているのかいないのか、さっぱりわからなかった。持ち主も「カギをポッケに入れとくだけでいいんですよ」とか言いくさって、セル回そうにもセルないし。ハンドル回そうにも…いやハンドルはあったな。アクセルを踏めば音もなく、すいと動く。タイヤが路面をこするかすかな「じゃりじゃり」という音しか聞えない。超怖い。ゴーストマシンである。
噂によれば、エコカー電気自動車他これら静かな車はあんまり静かなものだから、音を出すようにしたとかしないとか。
『疑似走行音発生装置』と呼ぶらしい。
http://www.corism.com/special/biz/556.html
ちょっと古いリンクで恐縮だが、今はどうなっているのだろうか。とりあえず、私が見た車はこんな音を鳴らしていなかった。
上記装置はつまり「今まではうるさいと思ってた車の音だけどいざ静かにしてみたら危ないので音を出せ」との要請による装置である。
もったいないことすんなや、という気持ちと、しかしまあ危険ではあるよね、という気持ちがせめぎあう話ではある。現在この装置が存在からしてそこまで普及しているように見えないのは、割とみんな同じ気持ちだからではないか。知らないが。
開発者とて浮かばれない。頑張って頑張って、ついに静かな車を開発したら「静か過ぎるから音出せ」と言われるわけだ。電気自動車の技術者にしてみれば「なんのために開発したのだ」と工場陸屋根から夜な夜な吠えたい気分であろう。なんならその吠え声を録音して車に搭載する。アクセルを踏んだら「うぉおーいおいおい」と車が啼く。
そこで我々消費者は走行音について考えるべきである。プリウスやリーフが妙な啼き声をあげて街中を走り出す前に。
さてどういう音にするか。
①車の音にする
ダメ。意味がない。いや、排気ガスや燃費の面で問題を解決したエンジンが搭載する装置なのだから意味がなくはないが、いかにも寂しい。技術者に「そんなら俺の遠吠え入れたっていいじゃねえか」と言い返されても強く反論できない。いつのまにか技師が自分の声を入れたくてたまらない感じになっているがそんな事実はない。と思う。
②音楽にする
まあ、これかなあと。『疑似走行音発生装置』もこの案から無駄な色気を抜いた話だろう。車が近くにいることを、視覚以外で訴えるには聴覚しかないのも確かだ。匂いをさせるわけにもいかないし。触覚?だからそれは人身事故でしょうが。味覚?しょっぺえこと言うなべらぼうめ。
②をうけて瞬時に私が思いついたのは、車専用に楽曲をディーラー各社で作成し、それを搭載することである。例えばレクサスとハリアーは同じ曲が流れるが、ミニキャブもインサイトも別の曲。後は聴いた瞬間に車の走行音であるという主張も込めたい。するとどんな曲になるか…
「みっつびしー、みっつびしー、おーお我らーのみっつっびっしー」
「ほっほっほんだ、ほんだのカー、ほっほっほんだ、日本のカー」
ダメっダメだった。売れない。というか、黙ってれば売れたはずの車も売れなくなる。一瞬いい案に思った自分の正気を疑う。
想像して欲しい。閑静な住宅地、交差してゆくスタイリッシュな車、車は間の抜けた歌をばらばらに歌っている。ダサッ。そんな車は舌を引っこ抜いて歌えなくしてやるぅ。車の舌の箇所については各社のマニュアル、ウェブサイト等でご確認ください。「車 舌 場所」で検索!
考え直そう。考え直さねばならない。なぜ走行音として音楽を流すのはダメなのか。
問題点を整理する。
・ガソリン車の駆動音を流すのはつまんないので駄目とする
・警告音なのである程度耳障りに(せねばならない/したくない)
・歌やインスト曲等、通常の楽曲を流すとうるさい街中と同じになる
・効果音は各社共通にすればある程度改善される
ばらばらだときっと駄目。
しかし同じにしたくない。
さあどうする。
ということで、こんなのはどうだろう。
全てのディーラーで同じ曲を鳴らすのはどうか。と言っても一曲をループするのではなく、有線放送のように、曲だけを延々ながすラジオ局を開設するのだ。音量はアクセルの踏み込みで上下する。そしてここからが重要。
各ディーラーは1パートぶんだけ、曲を流す。
どういうことか。トヨタはドラム、ミツビシはベース、ホンダはギター、というように、曲を構成する楽器を1つ分だけ鳴らすのだ。
会社の数が多少多くとも問題はない。キーボード、ストリングス、ボーカル、コーラス…さらにストリングスをバイオリンやチェロに分けてゆけば、10を軽く越すパート数で作れる。
ストリングス1パートだけが鳴っていてもなんの曲だかわからないかもしれないが、なあに、曲として認識できる必要はないのだ。音が出ることが重要なのだから。
こうして、各社1パートで何の曲だかわからない曲をちゃらちゃら流しながら走り続けるわけだ。うるさいほどではないが、まあ、聴こえるね、という程度。しかし、3、4社の車が出揃ったところで状況は一変する。
車が、ジャムセッションを始めるのだ。
バイオリンのフレーズにベースが絡みつき、遠くから聞こえてくるのはコーラスパート、ギターが華を添えたかと思えばついにリズムを刻みだすドラムス、さあボーカルは、ボーカルは…来たー!
車が、音楽を奏でる。メーカーの垣根を越え、それぞれが、全て一つに!それがコーラス。愛のコーラス。広い世界の中でひとりじゃないって素敵な事でノーミュージックノーライフロックンロールが鳴りやまなくてラブずっきゅんやぱ好きゃねーん。
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……というような装置を車に設置するとカーオーディオでCD聴くのにすごい邪魔なのと、運転中に聴きたくもない時に聴きたくもない曲が流れ続けるなんてうんざりすること請け合いなのでそういうことをやってはいけないと思います。技術者の鳴き声でも入れた方がまだマシなのではないでしょうか。
おしまい。うぉおーいおいおい。
