ペルル嬢(115)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



————————【115】————————————————
   
   Donc  l'enfant  fut  adoptée,  et  élevée  dans
la  famille. Elle  grandit; des  années  passèrent.
Elle  était  gentille,  douce,  obéissante. Tout  le
mondee  l'aimait  et  on  l'aurait  abominablement
gâtée  si  ma  mère  ne  l'eût  empêché.
     
       
—————————(訳)————————————————

 そういうわけでこの子はシャンタル家の養女となって、
育てられました.彼女は成長しました;年月が流れまし
た.彼女は親切で、やさしく、素直に育ちました.誰も
が彼女を可愛がりました.もしも母がこの子のわがまま
を止めていなければ、甘やかされて育っていたことでし
ょう.
 

—————————《語句》————————————————
 
fut adoptée:(受け身、3単女単純過去) 養女になりました
  < adopter (他) 養女にする 
fut élevée:(受け身、3単女単純過去) 育てられました、
    大きくなりました.
  < élever (他) 育てる;
fut:(3単単純過去)  < être 
grandit:(3単単純過去) < grandir (自) 大きくなる
    成長する
des années passèrent:年月が流れました.
passèrent:(3複単純過去) < passer (自) 通る、過ぎる
    (時が) 過ぎ去る    
abominablement:(副) ひどく下手に、 
    (話) たいへん、とても
gâté(e):(形)甘やかされた、わがままな
  < gâter (他) 甘やかす   
gâter: (他) 甘やかす
eût empêché:(接続法大過去)  
empêché:(p.passé) < empêcer (他) 妨げる、
  邪魔をする、阻止する
si ma mère ne l'eût empêché:(接続法大過去)
   これは条件法第2形で「過去の仮定」 
      もしも母が(彼女のわがままを)
      阻止しなかったら
      l'eût のl' はla (ペルルさん)ではなく
      「甘やかされること」を受ける中性代名詞


——————————≪gâter ≫——————————————

「甘やかす」のフランス語はgâter で、英語のspoil に
相当します.なので、「損なう」「台無しにする」という
意味も持ちますが、逆に「過分に喜ばす」という使い方
もするようです.過度の贈り物で相手を喜ばすときに用
います:
  C'est pour moi, ces fleurs ?  Vraiment, vous me gâtez.
    (この花を私に? 
   こんなにしてくださって本当に恐縮です.)       





———————————≪文法≫———————————————
 
過去における仮定は基本的には、条件節が
「Si + 直説法大過去」、
そして帰結節に「条件法過去」
を用いて、
Si j'avais eu de l'argent, j'aurais achré ce dictionnaire.
スィジャヴェズュ ドゥラルジャン ジョーレ ザシュテ スディクスィヨネール
もしも(あのときに)お金があったらこの字引を
買ったのに.

なのですが、接続法大過去が、条件法第2形として
代用されます.代用パターンは3通りあります.

基本形(Si + 直説法大過去、条件法過去)

第2形(パターン1)
(接・大過去=条・過去2形)、(条・過去)
S'il l'eût pu, il serait revenu.
もしできたら、彼は戻って来たろうに.

第2形(パターン2)
(直・大過去)、(接・大過去=条・過去2形)
S'il l'avait pu, il fût revenu.
もしできたら、彼は戻って来たろうに.

第2形(パターン3)
(接・大過去=条・過去2形)、(接・大過去=条・過去2形)
S'il l'eût pu, il fût revenu.
もしできたら、彼は戻って来たろうに.

というわけで、英語に比べてかなり自由のようです.