ボヌール・デ・ダム百貨店(2)
エミール・ゾラの作品より
Au Bonheur Des Dames
Émile Zola



——————————【2】————————————————
   
Elle  tenait  par  la  main  Pépé  et  Jean  la  
suivait,  tous  les  trois  brisés  du  voyage,  
effarés  et  perdus,  au  milieu  du  vaste  Paris,
le  nez  levé  sur  les  maisons,  demandant  à
chaque  carrefour  la  rue  de  la  Michodière,
dans  laquelle  leur  oncle  Baudu  demeurait.
 
    
.——————————(訳)————————————————

彼女はペペの手を引き、そのあとをジャンがついてきた.
3人とも長旅でくたくたに疲れていたところに、大都会
のパリの真ん中で、すっかり混乱していた.交差点ごと
に、家並を見上げ、彼らのボーデュ叔父さんの住んでい
るというミショディエール通りはどこかと、尋ねていた
のだった.


——————————《語句》————————————————
          
brisé:(形) ❶折れた、❷壊れた、
   ❸(疲れて)くたくたの   
effaré:(    形) 仰天した、ぎょっとした、おびえた.    
perdu:(形) 失われた、迷った、迷子になった、
   途方に暮れた、すっかり混乱した  
levé:(p.passé) < lever (他) 持ち上げる
demandant:(p.pré) 尋ねながら(分詞節を作る)
carrefour:(m) 四辻、十字路、交差点、
   交差点という意味では、croisement (m)もある.     
Baudu:(人名) ボデュ、もしくはボーデュ.
   ボーデュのほうが耳に馴染むと思いボーデュと
      訳しました.
demeurait:(3単半過去) < demeurer (自) 住む
   本文でじゃ「住む」(助動詞avoir)だが、
   コピュラ(助動詞êre)で用いられることも
   多いので注意.  
 

——————————— ≪文法≫ ———————————————

❶文法通りに訳すなら、1つの文だから、和訳も1つに
なります.切った箇所はle nez から先です.
le nez levé sur les maisons.....は浮遊した名詞句ですが、
étant が脱落した分詞節と考えます.「群立する建物を
見上げながら」となります.
1つの文にやってみますか?こんな感じです.

「3人とも長旅でへとへとに疲れて、ドゥニーズがペペ
の手を引き、そのあとをジャンがついてきていたが広い
パリの真ん中ですっかり途方に暮れ、交差点ごとに居並
ぶ建物を見上げながら、叔父ボーデュが住むミショディ
エール通りはどこかと人に尋ねるのだった.」


❷コピュラとは連辞とか繋辞と言われる動詞で、主語と
属詞が同一のものの存在、状態、状態の変化などを繋ぐ
動詞です.ヘビでもコブラでもありません.
demeurer:(同じ状態に)いる、のままでいる
Elle est demeurée silencieuse toute la soirée.
彼女は一晩中黙っていた.