Gustave Flabert
Madam Bovary
ボヴァリー夫人

ボヴァリー夫人(18)


       
———————————【18】—————————————————
                                
   ——Que  cherchez-vous ?   demanda  le  professeur.
   ——Ma  cas..., fit  timidement  le  nouveau,  prome-
nant  autour  de  lui  des  regards  inquiets.
   ——Cinq  cents  vers  à  toute  la  classe !  exclamé
d'une  voix  furieuse,   arrêta,   comme   le  Quos  ego,
une  bourrasque  nouvelle.


———————————(訳)—————————————————

  「何を探しているのだ?」 先生が聞いた.
  「ぼくの帽...心配そうな視線を自分の回りに走らせ
ながら新入りはおずおずとしていた.
 「クラス全員、詩を500行!」
この言葉が怒鳴る声で叫ばれたが、軍神が部下を脅すク
オス・エゴを叫ぶように、また新たな笑いの突風を阻止
したのだった.

発せられた.

 

———————————《語句》————————————————
       
promener des regards:視線をあちこちに走らせる
cinq cents:[サンソン](数) 500  (どちらもサンと読むのでサンサン
    ですが、cinqはセン、cent はソンに近い音で、耳には
   サンソンと聞こえます.)       
vers:(m) 詩の1行、 詩句、
  [複数] 詩       
furieux(se):(形) 激怒した、激昂した、怒り狂った
arrêta:(3単単純過去) < arrêter
bourrasque:(f) ❶突風、疾風;❷かんしゃく
Quos ego:テキストにはラテン語でこの言葉の元が書か
    れているのですが、さっぱりわかりません.フ
    ランス語の解説もわかりません.訳本の解説を
    みると、軍神ネプチューンが目下の者を脅して
    命令するのにこのフレーズを使ったのだとか.
    今でいう「パワハラ」ですね.



———————————≪読解≫————————————————

❶——Ma cas..., fit timidement le nouveau, promenant  
autour de lui des regards inquiets.

「僕の帽子...」この箇所だけが発話されたセリフ.
あとは地の文ですが、主語と動詞が倒置されています.
並べ替えると:
Le  nouveau fit timidement.
文の骨格はこれだけであとは、付帯状況.
fit はfaire の単純過去3人称単数.ここでは自動詞で
「振舞う」の意味.「おずおずとしていた」となります.
これに分詞節がトッピングされて、
promenant autour de lui des regards inquiets
「心配そうな視線を自分の周囲に走らせながら」  

全部合わせると
「僕の帽子...」心配そうな視線を自分の周囲に走らせ
ながら、新入りはおずおずとしていた.

❷arrêta:これの主語は「クラス全員、詩を500行!」
 という先生の脅し文句全体になります.この文句が
 生徒たちのクスクス笑いを止めてしまいました.
 ちょっと笑っただけで詩を500 行(20ページ分ぐら
 いでしょうか)書かされたらたまりません.