心すなおな人たち(3)
CŒURS SIMPLES
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Charles-Louis Philippe
短篇集(2)より
前回のセリフの続きです.夫が鳴らすベルではなかった
と振り返る妻の独白の続きからスタートです.
——————————【3】—————————————————
« On sentait que la personne qui avait tiré le
cordon était un peu embarrassée. La sonnette
s' y en mise à deux fois pour se faire entendre. »
Elle alla ouvrir.
.——————————(訳)—————————————————
「ベルを鳴らすひもを引っぱった人がちょっとまごつ
いた風だったように思えたわ.ちゃんと聞こえるように
二度目を鳴らし出したわ.」
彼女はドアを開けに行きました.
——————————⦅語句⦆—————————————————
personne:(f) 人、人間;
Il y quatre personnes dns la salle d'attente.
待合室には4人の人がいます.
*(注意1) personne は女性名詞だが、「人」は
男女の区別なく「人」.例文の4人は男性
か女性か、その混合かは不明.
*(注意2)personne には同つづりの不定代名詞も
あるので要注意:「誰も~ない」
tire le cordon:むかしは紐を引いて鈴を鳴らした.
sonnette:(f) 鈴、呼び鈴、ベル
tirer le cordon de sonnette / 呼び鈴の紐を引く
tirer les cordons de sonnette / 1軒1軒頼んで歩く
(セールスして回る)
s'y mettre:「(ある動作に)とりかかる」の意.
à deux fois:「二度」この2度、3度という場合、現代で
は前置詞なしでdeux fois、trois fois などという.
フィリップ(1874-1909)は昔の人なのでたまに古い
表現があります.
尚、逆に、« à plusieurs fois »、« y regarder à deux
fois » 「しげしげと眺める」というような成句には
à のついた形が残されています.
pour se faire entendre:自分を聞こえさせるために
ちゃんとベルが鳴るのを聞いてもらうために.