Une vie / Guy de Maupassant
女の一生(63)
Une vie (63)
——————————【63】———————————————
Jeanne demanda: « Est- ce beau, maintenant, mon
château ? »
Le baron répondit gaiement: « Tu verras, fillete. »
Mais peu à peu la violence de l' averse diminuait;
puis ce ne fut plus qu' une sorte de brume, une
très fine poussière de pluie voltigeant.
..——————————(訳)——————————————————
ジャンヌが尋ねた.「私の館って、今でも綺麗なの
かしら?」
男爵が陽気に答えた.「ジャンヌや、今にわかるよ.」
さて、雨の激しさは徐々に弱まりました.そして雨
はもはや一種の霧のようなものでしかありませんでし
た.それは粉にした雨が虫のように飛び回るようなも
のに過ぎませんでした.
——————————⦅語句⦆———————————————
fillette:fille (娘)に縮小辞ette が合体したもの.
ette は「~ちゃん」ほどの意味.「お嬢ちゃん」
となるのだが、ここでは我が子への呼びかけな
ので「ジャンヌや」としておきました.この頃
の日本語では「や」」の代わりに語尾のヌを強く
発音するようですが.
mais:しかし;ここでは意味がずれて「さて」「ところで」
(念のためクラウン仏和5版を引いた所mais の❸
にその意味で載っておりました)
violence:(f) 暴力、乱暴
averse:(f) にわか雨、驟雨
diminuait:(3単半過去) < diminuer (自/他)
減らす、減る;
brume:(f) 霧、もや
poussière:[プーシエール](f) ❶ほこり、ちり、❷粉末
pluie:(f) 雨
voltigeant:<voltiger (自) (虫などが) 飛び回る
ne...plus que ~:もう~しか...ない
Ce ne fut plus qu'une sorte de brume.
fut はêtre の単純過去3単
それはもはや一種の霧に過ぎなかった.
une très fine poussière de pluie voltigeant:
同格による「雨」の言いかえ.
それはもはや一種の霧に過ぎなかった、いわば
粉末が虫のように飛び回っているというもの
だった.