「アリス」(4)(フィリップ短篇集より)

      ALICE



——————————【4】——————————————————

Alice,  devant  qui  bien  des  fois,  on  s'était  plaint
de  cet  état  de  choses,  avait  encore  trouvé  l' oc-
casion  de  dire  un  joli  mot.
    
 
—————————— (訳)——————————————————

 アリスは自分の前で、何度も、人があれこれ事の状況
について不満を唱えるので、気の利いた言葉を言う機会
を尚も見つけていたのでした.



——————————《語句》———————————————————
        
devant qui:アリスは自分の前で;
   前置詞のあとではふつうは強勢形elle を用いると
   ころ.qui を使っているので関係文になりますが
   この関係節の主語はon です.学校文法ではqui
   が主語になるところですが、「その彼女の前で、
   人はあれこれ不平をこぼすのでアリスはまたもや
   気の利いたセリフを言う機会を見つけていたので
   した.」
    関係代名詞が前置詞に吸収されて、前置詞句に
   成り下がり新たにon という主語が生まれて、挿
   入節となった珍しいケースです.
      こういう破格の文が出ることがあるので、まだま
      だ翻訳機は幸か不幸か人間に追いつきません.
plaint:(p.passé) < plaindre (他) 気の毒に思う  
se plaindre (pr) 不満を言う (de について)
    [plaindre (他) 気の毒に思う] を知っていれば
  se plaindre は[自分を気の毒に思う]→[不満を言う]
    なので導き出せるでしょう.