「荷 車」(45)(フィリップ短篇集より)

    LA  CHARRETTE

 
.—————————【45】————————————————

Comme  ils  possédaient  encore  deux  sous,   ils  auraient
bien  voulu  qu' il  y  eût  dans  le  voisinage  une  épicerie
pour  y  acheter  des  bonbons.


.——————————(訳)——————————————————

彼らはまだ2スー持っていたので近所にボンボンが買える
食料品店があればいいなと思っていました.

 
 
——————————《語句等》—————————————————
      
possédaient:  
ils auraient bien voulu qu'il y eût dans le voisinage
une épicerie pour y acheter des bonbons.
    主節は条件法過去、そして<vouloir que + 接続法>
  つまり、接続法が要求されるので、従属節のque 以下
    は時制一致を伴い、「接続法半過去」となっている.
   フランス語学習初期段階で習ったil y a ~ は直説法
    現在でしたので、これを接続法半過去にして、
    il y eût となる.
     Il y a une épicerie dans le voisinage.
      近所に食料品店があります.
               ↓
     qu'il y eût une épicerie dans le voisinage
      近所に食料品店があることを

      本文ではune épicerie のあとに長い修飾語句がついた
      ため、dans le voisinage を先にもってています.
             ↓
      qu'il y eût dans le voisinage une épicerie pour  
      y acheter des bonbons
      ボンボンが買える食料品店が近所にあることを

      これに条件法過去の主節 ils auraient bien voulu
   (彼らは望んでいた) をセットして
              ↓
      ils auraient bien voulu qu'il y eût dans le voisinage une
   épicerie pour y acheter des bonbons.
      彼らは近所にボンボンが買える食料品店があれば
      いいなと思っていた.
      
      そしてこれにComme ils possédaient encore deux sous,
      (彼らはまだ2スー持っていたので)
      を文頭に付け加えたものが今回のテキスト全文と
      なります.
      possédaient の発音はよろしいでしょうか?
      [ポセデ] まさか、ポッセダイエントなんて
      言っている人はいませんよね.
      
      3か月で20kg 減量「ポッセ式ダイエット」
      (うそです)

      おさらいをしましょう:
Comme  ils  possédaient  encore  deux  sous,   ils  auraient
bien  voulu  qu' il  y  eût  dans  le  voisinage  une  épicerie
pour  y  acheter  des  bonbons.
彼らはまだ2スー持っていたので、近所にボンボンが買える
食料品店があればいいなと思っていました.

さて何度もおさらいをしていると、ふと思われませんか?
pour の訳し方をもっと自然にできるんじゃない?と.
やってみましょう.

「彼らはまだ2スー持っていたので、近所に食料品店が
あれば、そこでボンボンを買いたいと思いました.」

pour のフレーズは直前のépicerie を修飾する語句だと説明
はしましたが、フランス人の理解の実情は、「どこでもいい」
のです.「ボンボン買いたいんだよな」という思いが
pour y acheter des bonbon となって、文のどこかに放り込ん
じゃえ!ぐらいな感じだと思います.


では最後に、bonbon について.
私たちがbonbon といえばウィスキーボンボンというチョコ
レートですよね.しかしbonbon は子供を意識して作られた
お菓子らしいので原形のキャンデーはノンアルコールだった
と思われます.幼児語(ことばを繰り返す単語)だったと言
われていますので、bon (よい)を繰り返したらしい.
 辞書の解説にも、子供にあげる「いいもの」が語源だとか.

だけど、この『荷車』では幼児にもワインを飲ませる無茶ぶり
が描かれているので、この説明は絶対ではなく、参考程度でよ
ろしいんじゃないでしょうか.