ロンドリ姉妹(20)


——————————【20】—————————————————

 Alors,  devant   le  bock  baveux  apporté   par  un  
garçon  qui  court,   on  se  sent   si  abominablement
seul  qu' une  sorte  de  folie  vous  saisit,  un  besoin
de  partir,  d' aller  autre  part,   n' importe  où,   pour
ne  pas  rester  là,  devant  cette  table  de  marbre  et   
sous  ce  lustre  éclatant.  

 
.——————————(訳)———————————————

 さて、走るようにしてボーイが運んできたビールは
縁からあふれ出ている.それを目の前にすれば、あま
りにひどく孤独感を感じるため、狂気に憑りつかれて、
店を出ずにはおれなくなるのだ.そこにとどまらずに
すむために、どこか他のところにいかずにはいられな
くなるのだ.この大理石のテーブルの前と、この輝く
シャンデリアの下にもうじっとしてはいられなくなる
のだ.


...—————————⦅語句⦆———————————————
          
bock:(m) (カフェで) グラスビール;ビールのグラス  
baveux(euse):(形) よだれを流す  
apporté:(p.passé)(形) 運ばれた;<apporter (他) 運ぶ      
court:(直現3単) < courir (自) 走る     
se sentir:自分を~だと感じる     
abominablement:[アボミナーブルマン](形) えげつなく、
    ひどく、あきれるほど  
folie:(f) 狂気、精神異常        
seul(e):(形) 唯一の、ただひとつの、ただ一人の
saisit:< saisir (他)(第2群) つかむ、(人を)捕らえる
    握る、把握する    
besoin:(m) 必要、欲求
marbre:[マルブル](m) 大理石    
lustre:[リュストル](m) シャンデリア   
éclatant:(p.pré) < éclater (自)❶ 爆発する、破裂する;
          ❷ 輝く;



—————————《悩んだフレーズ》——————————————

devant le bock baveux apporté par un garçon:
ボーイの持ってきたよだれを垂らした1杯の
グラスビール

これに30分ほど悩みました.最終的見解は
「ボーイの持ってきた山盛りでコップの縁からあふれ
出ている1杯のビールを前にして」

どのように悩んだかというと、ビールがよだれを垂らす?
あほか!で思考停止してしまったこと.
これにより覚ったことは、たとえ、相手がビールで
あろうとも、「あほか」と言って人(ビールも)を
見下してしまえば、それで終わり.ジ・エンド.
思考停止となり、学習放棄へとつながる.

本日学んだ教訓は、瞑想して欲を捨て、ひたすら、
「よだれを垂らしたビールとは何か?」を
思い描くこと.

ビールがグラスの中で、よだれを垂れるとどうなるか?
思い描いてみる.どうなる?気持ち悪くてもう飲めない
か?飲まなくてもいい.訳をつけるのが仕事だ.さあ
どうする?

ビールのよだれは、やっぱりビールですわ.
泡吹いている状態がよだれかしら?

いやいや、そうじゃないだろう.よだれをこけば
縁からこぼれるのさ.

ここまできて、これを訳文にしようと決意が固まった.