「アルト・ハイデルベルク」は第四場の学習から全ページの半分
まで進み、後半に入ります.登山にたとえると、今、頂上にいま
す.「ヤッホー」、「ヤッホー」、「あ、誰か手を振っている…なわけ
ないから~」


アルト・ハイデルベルク(144)
𝕬𝖑𝖙 𝕳𝖊𝖎𝖉𝖊𝖑𝖇𝖊𝖗𝖌



——————————【144】—————————————————

....Der  Doktor: (herein,  Zylinder,  hochgeschlagener  Rockkragen,
........................Hände in den Hosentaschen.  So geht er von links nach
........................rechts über die ganze Bühne).

...........Detlev: Morgen, Herr von Luts...

..............Lutz: Herr Graf.

..Karl Heinrich: Dass  die  Hunde  nicht  wieder hereinkommen !
........................Kellermann !  Die Biester  reißen  mit  die  ganze
........................Wohnung  zusammen.  Tag, Lutz.

.............Lutz: Eure Durchlaucht.

.Karl Heinrich: Gut.  dass Sie geschlafen haben, Lutz.  Es ist spät
.......................geworden,  oder*  vielmehr früh.

.............Lutz: Geschlafen.  Ich geschlafen ?

.Karl Heinrich: Wir wollen einen Schnabus trinken.  Käthie
.......................gib mal !  Lutz, vorwärts.

........Doktor: (schlägt das Klavier auf). Lutz !

............Lutz: (grimmig).  Was ?

........Doktor: Zigaretten her !

             *oder :Heinz-Peter Heilmann版ではober となって
          いますが入力ミスでしょう.oder が正しい.

——————————— (訳) ————————————————

............博士、登場.シルクハット姿.上着の襟を立てている.手を
............ズボンのポケットに突っ込んでいる.そのいで立ちで舞台左
............から右へと移動.       

.デートレフ: おはよう、ルッツ.

......ルッツ:  あ、これは伯爵さま.

カール・ハインリヒ: もう、犬を中に入れちゃだめだってば! 
....................ケラーマン!  こいつらが共に私の部屋を
....................ずたずたに引き裂くんだよ.
....................おはよう、ルッツ.
                                   
......ルッツ:  殿下.

カール・ハインリヒ:  寝たのはよかった、ルッツ.遅くなりましたね.
...................それとも早いかな.

......ルッツ: 寝た? この私が寝たと?

カール・ハインリヒ: みんな、シュナップスを飲みましょう.ケティ、
....................持ってきておくれ. ルッツ、もう行きなさい.

........博士:  (ピアノの蓋を開ける) ルッツ!

.....ルッツ: (荒々しく) 何です?

........博士: たばこをくれ! 



———————————《語彙》————————————————

der Zylinder:(同尾式) ①円柱、円筒、シリンダー
      ②シルクハット 
    Der Motor hat sechs Zylinder. / そのエンジンは6気筒である.
  Der Zauberer hat eine Taube aus dem Zylinder gezogen.
    その手品師はシルクハットの中から1羽のハトを取り出した.
hochgeschlagener:(形、過去分詞 + 格語尾) <hoch/schlagen
hoch/schlagen:(A格を) めくり上げる、(襟⁴を)立てる
Rockkragen:(辞書不掲載)→der Rock + der Kragen
  der Rock (変E) ①スカート、②(男性用)上着、ジャケット 
  der Kragen (同尾式)(南ドイツKrägen)  襟
hochgeschlagener Rockkragen:(er は複数D格語尾)(全体はD格)
  立てられた襟で (mit を補ってみましょう)(さらに言うと
  「着る」などの動詞が省略された分詞構文と受け止めると
  理解しやすいかと思います) 
Hände in den Hosentaschen:両手をズボンのポケットに突っ込んで
  「突っ込む」に相当する動詞は見当たらないのですが、これも
  「着る」と同様、省略されたものとして読みましょう.
  ところで、「突っ込む」という動詞はご存じでしょうか?
  stecken、stoßen などですが、いずれもA格目的語を取ります.
  つまり、Hände は複数A格.in den Hosentaschen という方向詞
  は、stecken、stoßen などの動詞には不可欠の補語になります.     
die Hosentasche:(弱) ズボンのポケット    
die Bühne:(弱) 舞台 (何度も出ました、この戯曲を読んだ記念
  にそろそろ覚えましょうか)    
die Biester:(複数) <das Biest (er 式) 不快な動物、獣、家畜;
       うるさい動物(虫も含む)
  尚、フラクトゥール版はBiester は Hunde (犬)となっています.  
reißen:(自/他) ずたずたに引き裂く;
  ここでは「部屋をめちゃめちゃに荒らす」
Schnabus:(辞書不掲載語、ネット検索によると、Schnapsのこと)
  あらためてSchnaps を引くと;火酒(アクコール度数の高い
  蒸留酒の総称)となっていた.シュナップスで検索すると
  楽天市場で瓶入りの透明のお酒が出ていました.かなり度数が
  高いので、恐らく体を温めるために飲まれていたのでしょう)
  尚、検索しているうちSchnabusの発音がわかりました:
  [シュナーブス] https://educalingo.com/ja/dic-de/schnabus      
vorwärts:(副) 前へ、前方へ
auf/schlagen:(本、ページなどを[A格]) 開く
grimmig:激怒した、憤慨した、立腹した、粗野な、残忍な
    ②激しい


—————————————≪語法≫————————————————

*) :Dass die Hunde nicht wieder hereinkommen !
     もう、犬を中に入れちゃだめだってば!
   dass:副文構造で、定動詞は文末に置く.
   ここでは接続法第1式  .「目的」を表し、
  「~であること」、「~であるように」となる.
  主文がないのですが、そこにあるはずの動詞は
  「命令」「希望」などの意味になる動詞です.

*2) :Gut.  dass Sie geschlafen haben, Lutz.
      ポツンと切れているが省略されている言葉は
      es ist で、こうなります;
   Es ist gut dass Sie geschlafen haben, Lutz.
      (みんなは徹夜だったが)君は寝てよかったね.