さすらいの青春(144)


—————————【144】————————————

 Puis*¹  la pesante classe d'hiver  commença ...
  Un coup brusque au carreau nous fit lever la tête.
Dressé*²  contre la porte,  nous aperçûmes le grand
Meaulnes  secouant,  avant d'entrer,  le givre de sa
blouse,  la tête haute  et comme ébloui !*³
 

——————————(訳)—————————————

 それから冬の重苦しい授業が始まった...
 突然窓ガラスを叩く音で、私たちは顔を上げた.
私たちは門扉を前にして真っ直ぐ立っていた.そ
して入って来る前に、上っ張りの霜を払いながら
眩しそうに顔を上げていたグラン・モーヌ*を目に
したのでした.


.—————————⦅語句》———————————————
                             
puis:次に、それから
pesante:(形/f) ❶重い、❷重苦しい     
brusque:(形) ❶そっけない、ぶっきらぼうな、
       ❷不意の、突然の         
coup:(m) 打つこと、突くこと、打つ音
carreau:(m) 窓ガラス          
dressé:(形、過去分詞) 真っ直ぐ立って         
contre:(前) ~によりかかって、~の近くに、
             ~に対して
aperçûmes:(単純過去1複) <apercevoir (他)
   ❶見える、目に入る、ちらっと見る、 
   ❷気づく、
  単純過去活用:aperçus,  aperçus,  aperçut,  
               aperçûmes,   aperçûtes,  aperçûrent
secouant:(現在分詞) <secouer (他) 
    ❶揺さぶる、激しく動かす
    ❷(体の部分を)振る、 
    ❸振り落とす、払いのける
givre:(m) 霧氷;雨氷;霜
givrer:(他) ❶霧氷で覆う、 
      ❷(霧氷状の白い粉を)ふりかける   
ébloui:(過去分詞) <éblouir (他)  
       目をくらます、だます
    être ébloui par les phares d'une voiture
      車のヘッドライトに目がくらむ
       être ébloui par la richesse / 富に目がくらむ
    Il croyait m'ébloui par ses promesses.
       彼は約束で私をだませると思っていた.



—————————≪解釈≫——————————————

*1)  Puis la pesante classe d'hiver commença.
     それから冬の重苦しい授業が始まった.

形容詞 pesante が class にかかるのか、それとも
classe d'hiver 全体にかかるのかで、受け取り方が
若干変わるかも.つまりclasse d'hiverにかかって、
冬独特のどんよりした灰色の空の下
での重々しい季節感での授業か、それとも単に
classにかかって(冬にかぎらず)いやな授業が
始まったのか.はっきりとはわからないのです
が、春ならば、暖かい日差しもあるのに、今は
冬で寒いし、教室中くさいにおいもただようし、
「いやな授業だぜ」みたいな感じでしょうか.


*2) Dressé contre la porte
    門扉を前にして、まっすぐに立って

dressé を「もたれて」と訳している本もありますが、
基本的には「立っている」という意味です.また
入口にもたれていたのでは霜を払い落すという同
時的行為をするには、やや不自然です.  
contre も「~に対して」(ものなどを立掛ける)
というようなときにも使う前置詞ですが、ここでは
   「~を前にして」「~に立ち向かって」


*3) !
「...眩しそうに !」で終わらせるように訳文を工夫
すれば「!」を付けることは可能です.「!」にこだ
わればの話.何でもかんでも仏文側の真似をして
「!」を付けたのではピントはずれになりますので!
   もちろん試験問題で「!を付けて訳せ」と言われ
れば、がんばってやってみてください!

私は文学的表現はへたくそなので、うまく!を最後に
置けませんが具体例のため、無理に!を最後に添えて
拙訳してみますと;

『それから冬の重苦しい授業が始まった...
 突然の窓ガラスを叩く音で、私たちは顔を
上げた.そこに私たちが見たものは、門扉を
前にして真っ直ぐ立っているグラン・モーヌ
でした.入って来る前に、上っ張りの霜を払
い落としていたのだ、眩しそうに!』



————————*〚グラン・モーヌ〛————————————

読みはじめの頃、「モーヌの兄貴」としていましたが、
読むにつれて、モーヌもフランソワも落ち着いた人柄
を感じさせます.「モーヌの兄貴」ではなく「モーヌ
兄さん」か、もうそのまま「グラン・モーヌ」とした
ほうが、よさそうなので、そのようにします.