ハリエット嬢(143)
Miss Harriet
Maupassant



——————————【143】———————————————

 Vers  le  matin  la  fatigue  m' accablant,  le  sommeil
enfin  me  saisit.   Je  m' éveillai  tard  et  ne  me  mon-
trai  que  pour  déjeuner,   confus  encore,   ne  sachant
quelle  contenance  garder.


———————————(訳)————————————————

 朝方になると、さすがに疲れて、やっと眠気が催しま
した.目覚めたのも遅く、昼食にしか姿を見せられませ
んでした.それも、まだぼんやりとしていて、どんな顔
をしていたのやら自分でも知るよしもありませんでした.
  


———————————〘語句〙————————————————
         
accabler:(他) 圧倒する、打ちのめす、参らせる、(de で)
la fatigue m'accablant:(分詞節) 疲れが私を打ちのめして  
              →もう疲れてくたくたになって
confus(e):[コンフュ、フューズ](形) ぼんやりした     
contenance:[コントナーンス](f) 態度、様子、平静さ
   garder une contenance assurée / 毅然たる態度を保つ
   par contenance / 平静を装って、照れかくしに


———————————≪文構造≫ ———————————————

「ne....que ~  /   ~しか…ない」
フランス語の授業で、必ず出てくる構文です.覚えてい
なければ、短編小説を読みこなすのは、きっと無茶です.
覚えてちょうだい.

Je ne me montrai que pour déjeuner.
私は昼食にしか姿を見せられなかった.
(pour にかかっていますので「~昼食のためだけにしか」)

何ですか?単純過去はまだ習っていない?じゃ
この例文で覚えましょう.
Il n'aime que le jazz. / 彼はジャズしか好きでない.


————————————≪文法≫ ———————————————

 絶対分詞節(proposition participale absolue)
本文に出てきた la fatigue m'accablant は絶対分詞節と
呼ばれるものです.分詞節は基本的には主節と同じ主
語をとるので、分詞節側の主語は省きますが、分詞節側
の主語が主節の主語と違う場合もあります.その場合の
分詞節は絶対分詞節と呼ばれます.
   絶対分詞節は、一般に原因、理由、条件を表す副詞節
として働きます.
 La nuit tombant, on alluma la lampe. /
  夜になったのでランプがともされた.(理由)
 [Parce que la nuit tombait,...と同じ意味]
 Dieu aidant, nous y parviendrons. / 神がお助けくだされば、
 われわれはそこに到達するだろう.(条件)
 [Dieu nous aide, ....の意味と同じ]

* 「新フランス広文典(白水社)」p 283 から引用しました.