金の脳みそを持った男(33)


——————————【33】———————————————

Le  soir,  à l' heure  où  les bazars  s' illuminent,  il
s'  arrêta  devant  une  large  vitrine  dans  laquelle  tout
un  fouillis   d' étoffes  et  de  parures  reluisait  aux  lu-
mières,   et   resta  là  longtemps  à  regarder  deux  bot-
tines  de satin  bleu  bordées  de  duvet  de  cygne.  
 
———————————(訳)————————————————

夜、街の店に灯りが点る頃、男はある大きなショーウィ
ンドーの前で立ち止まりました.山積みされた織物と装
身具が照明を受けて光り輝いていたショーウィンドー
の前で長いことハーフブーツを見て長い間、そこに居続
けました.白鳥の羽毛で縁取られた青い色の絹のハーフ
ブーツをずっと眺めていました.

 


.——————————《語句》———————————————
             
bazar:(m) 市場、(中近東の)市場、店、廉価な店;
    本文のbazars は「店一般」を言っています.      
vitrine:(f) ショーウィンドー、陳列ケース;
   regarder les vitrines / ショーウィンドーを眺める、
   ショーウィンドーショッピングをする
fouillis:[fuji フイイ](m) 雑然とした堆積、
   un fouillis d'idées / 雑然とした考え    
étoffe:[エトッフ](f) 素材、布地、生地、織物;
   étoffe de laine / 綿織物、
      étoffe de coton / 毛織物
   l'étoffe d'un roman / 小説の素材 
parure:(f) ❶装飾、❷(一揃いの)装身具、アクセサリー、
   parure de diamonts / ダイヤの装身具   
reluisait:(半過去3単)<reluire (自)(反射で、磨かれて)
   輝く、光る   
lumière:(f) 光り、明り      
resta là longtemps:(単純過去3単) その場にずっと残っ
   ていた      
rester à + 不定詞:~するために残る、
   ~して過ごす  
rester à regarder deux bottines de satin
       2つの絹のブーツを眺めて
bottine:(f) ハーフブーツ
à regarder deux bottines:
de satin bleu:青いサテンの    
cygne:(m) 白鳥    
border:(他) [de で]縁取る、囲む
bordé:(形) 縁飾りの付いた
duvet:[デュヴェ](m) 羽毛、ダウン、にこ毛
bordées de duvet de cygne:白鳥の羽毛で縁取られた
 
 
—————————≪ひとこと≫————————————————

今回の訳文、不細工な訳になりましたが、全部を原文
通りにくっつけて訳すと相当長い修飾語句が来るので
息継ぎのために切りました.切らないとどうなるか?
こうなります:

「夜、街の店に灯りが点る頃、男は山積みされた織物と
装身具が照明を受けて光り輝いていたある大きなショー
ウィンドーの前で立ち止まり、長いこと白鳥の羽毛で縁
取られた青い色の絹のハーフブーツを眺めて、そこに居
続けました.」

まあ、明治時代の文学作品の平均的な長さはこのぐらい
なので、人によっては抵抗がないかも知れません.でも
現代の感覚から言えば、5行に渡る長文はちょっと苦し
いかも知れません.因みにドーデは天保11年生まれ、
明治30年没だそうです.(1840年~1897年)