アルト・ハイデルベルク(78)


——————————【78】—————————————————————
            
......Käthie:(hinter der Bühne). I komm schon !

......Rüder:Die Musici solle au anfasse.  
.................Sie mache schon Musik,
.................ehe die Herre Studente komme.

..Fr. Rüder:Sie stimme ja nur.

......Rüder:Des ischt mir glei*, sie müsse anfasse.

Erster Musikus:Wo nein denn ?

.......Rüder:Drüben nei in den Garte, glei rechts an den Neckar.  
..................Vorn sitzen die Schwabe, dann die Vandale, dann
..................die Sachse-Preuße, rechts die Sachse und die West-
..................phale und drüben die Rhenane (seufzt).
..................'s ischt a Stückel Arbeit, daß man das alles im
..................Kopf behält.


——————————(訳)—————————————————————
       
..............ケティ:(舞台裏から) すぐに行くわ!

........リューダー:楽団の人たちにも手伝ってもらおう.学生さん
................................たちがまだ来ないのにもう音楽をやっているもの.

..リューダー夫人:あれは、みなさん楽器の調律をしているのですよ.

........リューダー:私にはそんな区別はつかないよ.
................................手伝ってもらわなくっちゃ.

........第一の楽士:一体どこに運べというのですか?

........リューダー:下の庭だ.ネッカル川に沿って右だよ.前側は
.........................シュヴァーベン学生団が座る.それからヴァン
.........................ダル学生団の席.そして、ザクセン・プロイセ
.........................ン学生団が座る.右は、ザクセン学生団と
.........................ヴェスト・ファーレン学生団.そして、その向こう
.........................はライン学生団か.(溜息をつく)
.........................やれやれ.これだけのことを全て、頭に入れておく
.........................なんて、大変な仕事だわい.



———————《おことわりとお詫び》———————————————————
    
学生団の名前については、「~団」が入るのか、要らない
のかがわからず、したがって、語尾変化が不明です.
学識も資料もなく申し訳ないです.すみません.岩波文庫、
丸山匠先生の訳に従っておきました.尚、訳文側には
すべて、「~学生団」とつけておきました.


———————《語彙》————————————————————————
            
Käthie:(女性の名前) カタリーナに由来する愛称名.日本語訳本
         では、岩波文庫版が「ケーティ」、旺文社版は「ケティ」です.
         この学習では「ケティ」にしました.
die Bühne: {_/_n} 舞台    
die Musici: (pl) <der Msico (イタリア語由来) 楽士
an/fassen: (自) 手を貸す 
        Fass mit an ! / 手を貸してくれ!     
ehe: (従属接続詞) ~する以前に、~しないうちに 
stimme: <stimmen (他) (4格) (楽器を) 調律する
Des ischt mir glei* → Das ist mir gleich.
          それは 私には同じことだ.
wo nein:   一体どこに nein は「意外」の表現
      (自分が手伝わされるのに驚いている表現)
drüben: (副) 向こう側に   
drüben nei in den Garte: → drüben nieder in den Garten
                    向こうの下の庭に      
Stückel: → das Stück {_(e)s/_e} ひとかたまり
  ein Stück Arbeit  相当な仕事   本文、セリフでは
   's ischt a Stückel Arbeit  と南部なまりで発話されて
  います.
  's は後方のdaßという内容主語の先行標識、仮置き場.
 behält:<behalten (4格を) もっておく、保つ、
       (4格を)+(場所に)とどめておく
     das alles im Kopf behalten
  これをすべて頭に叩き込んでおくこと
  このdas は具体的な「名前」ではなく、文の内容
  を指す「そういうこと」 
    das alles: そういうこと全部を alles (√all) es と語尾が
  ついていても、中性単数「すべてのこと」
  その「すべてのこと」をim Kopf  頭に保っておくこと、
  それは、ein Stück Arbeit 、大変な仕事だ、と
  言っています.