仏文解釈法(1)     科目:フランス語学習

 教材:『新しい仏文解釈法』(大学書林)



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第1章 主語
         1.  主語を探せ

  文を解釈するにあたっては、文の骨格である主語と動詞との連
絡関係を明白にしなければならない.  それにはまず文の主語を発
見することが大切である.  動詞の人称、数および性はその際の最
も重要な手がかりである.
    
             [例文Ⅰ]
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 Le chat gris de la voisine poursuit une souris
    dans le grenier.

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 [語句]  poursuit  <poursuivre 追いかける.
      le  grenier 穀物倉、屋根裏部屋.

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[訳]  隣家の婦人の灰色の牡猫が屋根裏部屋の中で一匹のハツ
 カネズミを追いかけている.

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[注意] フランス語には主語を形の上で示す格変化もないし、日
本語のガ、ハに相当する助詞もない.  通常、主語は文の最初にく
ることによってその任務を明らかにしている.


1) 最も多く主語となる品詞は

① 名詞(単独の場合もあるし例文1のように付加形容詞や
  補語を従えていることもある.)
②  代名詞
③ 不定法の動詞


    [例文2]
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  Ignorer n'est pas gênant ;  mais savoir est diffiile.

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[訳] 知らないでいることは苦にもならない.  しかし知ること
 は難しいことだ.

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[説明] このように動詞の不定法は一種の名詞として扱われ、
 主語となることが多いし、また表面上の主語に対する事実上
 の主語としてもしばしば用いられる.
  
 Il faut travbailler. / 働くことが必要である.
 
  Il est honteux de mentir.
  うそをつくのは恥ずべきことである.


2) その他に主語となるもの
 上記以外の他の品詞、あるいは独立の1個の文が主語として
 用いられることもある.  その場合もそれらが一種の名詞とし
 て待遇されていると思えばよい.


      [例文3] 
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   Au Japon il y a beaucoup d'étudiants qui etudient
      le Français ;  mais peu peuvent le parler correctement.    

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[訳]  日本にはフランス語を研究する学生は多いが、その
 フランス語を正確に話すことの出来るものは極僅かしか
 ない.

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[説明]
1.peuは元来 assez,  beaucoup,  combien,  un peu などと
 同じく数量を示す副詞で、この場合は peu d'étudiants  と
 いうべきところであるが、peu だけで主語として用いられ
 ている.

2. peu 以下直訳ならば「ごく僅かのものがそれを正確に
 話すことができる.」と、言うところだが、日本語としては
 上の例文訳のほうが、落ち着きがよい.
              (自然な日本語だという意味)


      [例文4]
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    Faites aux autres ce que vous voudriez qu'on
     vous fît est un proverbe qui nous enseigne l'art de
      vivre le plus sûr.

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[訳] 「自分がして貰いたいことを他人にはしてあげなさい」
   とは、我々に最も確実なる処世術を教える諺である.

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[説明] 1.仏文太字の部分で、voudriezは条件法現在. これは
   Faite ce que vous voudriez qu'on vous fit. (他人があなたに
  してくれるようにと、あなたが望んでいることを、せよ
  と言っています. なぜ、条件法になっているかといえば、
  条件が隠されているからです.
  vouloir は voudriez (条件法)になっています.
    (あなたがもし望んでいるなら)という言外の条件が
  隠されているためです.
    次に、 voudriez の 内容は que 以下の従属節で述べられて
  います. vouloir は接続法を要求する動詞ですので、que 以下
    は接続法です. 主節が条件法のときは、従属節は、主節と同
    時間の事柄ならば、接続法半過去になります. よって on
    vous fit.

  そして...Faites 以下の長い命令文全体が、それ自体が
  今度は主語になっています. その動詞は、仏文下線部分の文
  の直後のest.   その属詞がun proverbe  この属詞にqui が
  ついています.  もう堪忍してほしい? 堪忍してほしければ
  この qui に un proverbe (諺)を代入して、ばっさり
  ここで切ってみましょう.(ほんまはあかんよ)
  
   「他人に、自分のしてもらいたいことをせよ」
   というのが諺だ.   その諺は人生をより確かに生きる処世術
   をあなたに教えるものだ.