アルト・ハイデルベルク(63)


—————————————【63】——————————————
          

........Doktor:  Ach, Karl Heinz, reise Du allein, ich gehe
......................nicht mit.  Ich hab's satt, ich tu's nicht mehr !
......................Macht doch alle, was Ihr wolt, aber laßt mich
......................aus dem Spiel !  Acht Jahre hab ich's mitgemacht,
......................ich tu's nicht mehr !

 

Karl Heinrich:  Ja. was ist denn ?


—————————————(訳)——————————————
           
博士   :  ああ、カール・ハインツ、旅行は君
...................ひとりで行き給え.私は行かないよ.
...................もううんざりだ.君ひとりでやりたい
...................ことを、何でもやり給え. でも私を巻き込む
...................のはやめてもらいたい.  8年間、一緒にやっ
...................てきた.もうやりますまい.
            
カール・
ハインリヒ: ええだから、一体、何なんです?


———————————《語句しらべ》————————————
                  
hab's satt=habe es satt:(4格+satt/haben)4格にうんざりしている
es は前の場面を受けて学習計画書とか日課表に従うこと
satt [ザット](形)① 満腹した、 ②あきあきした、うんざりした
ich tu's nicht mehr=ich tue es nicht mehr  私はもうしない.
   ここでもes は国務長官の言った「規則通り」の日課を
  遵守すること
mich aus dem Spiel lassen: 私を外す、巻き込まない   
mitgemacht: <mit/machen (4格を)いっしょにやる


———————————≪ひとこと≫————————————
            
博士は「南国ハイデルベルクは青春を謳歌するところだ」
そして「そういうところに行ってまで日課表通り勉学をするなんて
まっぴらごめんだ」と思っています. ich tue es nicht mehr. にその
気持ちが込められています.
  北ドイツ、カールスブルクがどのあたりか想像すれば、
フランクフルト経由の列車で行くとして、ゲッティンゲン
辺りが候補になると思います.
(デュッセルドルフなら都会なので留学には及ばないからです.)
緯度はロンドン辺りの高さなので、もう午後3時には夕方.
日本人には、ピンとこないかも知れませんが、冬場などは
本当に日が短いので、遠い南国には、あこがれと楽園を感じる
ようです.
カールスブルクがどれほど北かというと、たとえば、ゲッティ
ンゲンだとして、北緯52度辺りなので、日本列島にもってく
ると千島列島の北端、いや、カムチャッカ半島に達するかもし
れません。

 この戯曲で歌われるのかどうか、わかりませんが、
「あの低地には」というネッカー河の有名な歌があって、
すももや、葡萄が成って云々という歌詞なのですが
そういう風景も彼らには、憧れだったのかもしれません.