女の一生(2)
Une vie  /   Guy de Maupassant



Une vie (2)

————————————【2】—————————————————

 L'averse, toute la nuit, avait sonné contre les carreaux
et les toits. 

————————————《訳》—————————————————

 突然降ってきた雨が一晩中窓ガラスと屋根を鳴らし
続けていました.

———————————〘語句〙—————————————————

略号説明:(f) 女性名詞、女性形(形容詞などの)
         (m) 男性名詞、その他の男性形    
         √原形(動詞)、原級(形容詞、副詞)   
    < 基本形、辞書に載る形、単数形
    その他は漢字ひと文字で表す.ただし複数形は
    (複)と(pl) の両方を用いる.(m/pl) は男性複数
          toits のように分かりやすいものは単数形を書きます.

 

averse: (f) にわか雨 *
    assuyer une averse / にわか雨にあう
  recevoir une averse / にわか雨にあう  
sonné: (過去分詞) √sonner (自) (鐘・ベルが) 鳴る
carreaux: (複) <carreau (m) 窓ガラス 
toit: (m) 屋根 

 * にわか雨が一晩降り続けると、それはにわか雨ではないが
 形容表現は国によって様々だと思うので、ここでは突然の
 雨と訳しました.

———————————≪文法≫————————————————

 avait  sonné  の形は大過去に分類されます.
音を鳴らしていたなら、半過去sonnait を用いるはずですが
半過去という時制は時間限定されると用いることができません.
そこが英語の過去進行形と袂を分かつところ.分かれの一本杉.
ここでは「一晩中」という時間限定(初めから終わりまで)が
付けられていますので、文法上、半過去が使えず、複合過去に
強制送還されるところ.しかしそれでは、情景描写ができない
ので情状酌量されて大過去になっています.そういう判決です.
以上です.
 
 判決後の感想
 複合過去は事務手続き表現で、半過去は背景描写がよくお似合い.    
 期間がはっきりしている情景描写は、大過去へお回りください.