さすらいの青春(31)


—————————【31】———————————————————
               
En effet,  lorsque j'eus pénétré dans la salle
à manger,  immédiatement suivi de la visiteuse,

ma mère apparut tenant à deux mains sur sa

tête des fils de laiton,  des rubans et des plumes,

qui n'étaient pas encore parfaitement équilibrés... 

Elle me sourit,  de ses yeux bleus fatigués d'avoir

travaillé à la chute du jour,  et s'écria :


—————————(訳)———————————————————
         
誰も出迎えてやらなかったことは間違いない。実際
私が入ってゆくとき、女性は直ちに私のあとを
ついてきたのだから。そして食堂に入るや否や
母の姿が見えた。真鍮線やら、リボンやら、
羽根やらが、まだアンバランスの帽子頭に両手を
置いたままの母の姿が・・・  母、ミリーは, 
日暮れて、作業で疲れた青い目で私に微笑みかけ、
叫ぶように言った。


—————————《語彙》———————————————————
               
en effet:① 確かに、そのとおり
    ② なるほど、実際
    ③ 実際~だから、なるほど~だから、だって~だもの
eus pénétré:(前過去)<pénétrer (自)入る、入り込む
           (dans の中に)
apparu: <apparaître (いきなり)あらわれる、 見える
laiton: (m) 真鍮(しんちゅう)
fils:(pl) <(m) 糸、繊維糸、線
équilibrés:<équilibrer (他)釣り合わせる、均衡をとる、
           ② 埋め合わせる
chute: (f) 落ちること
     à la chute du jour  日暮れ時に
s'écria:(単純過去3単)< s'écrier  叫ぶ、大声を上げる


——————————≪ひとこと≫——————————————————
        
avoir もしくは être の単純過去形 + 過去分詞で
「前過去形」になります。
これは、単純過去で描かれている行為の中で、
その行為の直前の行為であるときに用いられる。
これで過去の遠近感が出せるというわけです。

「lorsque j'eus pénétré dans la salle à manger  
  私が食堂に入ったとき」

「ma mère apparut  母の姿が現れた」

では、「食堂に入った(前過去〉」のが先。
そのあと「母が出てきた(単純過去)」

ここで質問を受け付けます。

質問:「私が」入ったとき、ただちに「女性」が
     ついてきたから suivre こそ、前過去になってしまえ!

回答:ご立腹はもっとも。しかし、immédiatement という
    言葉がすでに「私が入った」のが直前で「女性が入っ
    た」のがすぐあとということが明白なので前過去にせず、
   「私」にくっつけて受け身表現にしています。
  「私は」「女性に追従されて」入ったのです。
   ここは時間差がなく同時進行なので、分詞構文です。
   きっと
   ジェロンディフ(これも同時進行でよく使われる)にすると、
   まだるっこしくなるので、歯切れのいい
   この表現を選んだのだと思います。
   
質問:あんた、そんなニュアンスまで、わかるんかい!
     仏検5級だろ!

回答に詰まった回答者:わからないけど、en がない分、
     てっとり早く言えるし・・ この辺りの真相はアラン・
     フルニエのみぞ知る・・・とか。

さて前過去という、この曲者の時制。
この時制をめんどくせーと思うか、ナイーブで
美しいと思うかで今後の、フランス語の上達に開きが
出るとすれば、ここはちょっとがんばって注意しま
ひょか。