仏教日記(40)
宝珠とは、自分にとって、この世の最高の宝を指す名称で
あって、必ずしも「宝珠」そのものではないことを前回
学習しました.
これは仏在世のときには、速やかな成道への道だったと
思います.思いますが、この現代、それをやり遂げるには
あまりにも、私たちは、知恵と知識と疑念が大きいため、
「不可能な無茶な行為だ」と理性が叫ぶことでしょう.
ところで、仏在世時の根本仏教と大乗との違いは以前にも
みましたが、もう一度大きな相違点をみますと、
❶奉仕の心がより徹底されている.
作り話ですが「西遊記」は奉仕の心を表した典型的な
大乗思想なのだと思います.三蔵法師も孫悟空も
沙悟浄も猪八戒もみんな「奉仕の心」でもって、
仏教伝道に命をかけました.
❷現証のご利益があることになっている
仏在世時はブッダは自然の道理を説いていましたので
キサー・ゴータミーが自分の死んだ子供をどうにか
生き返らせてほしいという願いを拒みました.
❸土地所有制や、貨幣経済の発展にともない、修行
方法に見直しを余儀なくされてきたこと:
洞穴修行、瞑想修行ができなくなったこともあり、
代替修行にめざす修行の眼目として理想像とされる
多くの菩薩を描き上げた.
特に❷のご利益に関しては、まさに「宝珠奉納」と関連
していて、成道のために最高の宝を喜捨してもいいのだよ
というメッセージの役目があり、これにより喜捨が正し
かったという安心を得ることができる.
それで私たちはどうすればいいのでしょうか?
はい、ブッダ在世時の教えが多く盛り込まれていると
思われる「ダンマパダ」や「スッタニパータ」などで
本来の教えを感じ取りながら、大乗仏教を信仰し
ていけばいいのではないでしょうか?
あれかこれかの二者択一ではなく、2つを織り込んで
1つの綺麗な布を織ればいいのだと思います.
大乗経典はどれもこれも排他的で、まるで嫁が
よその女と親しくするな、といわんばかりの
純潔、純信を要求しています.
もちろん浮気はいけません.が...
仏教はまた別でしょう.
現代の仏道は多種多様なので、どれが正しいかは
自分自身がやってみて、これだ、と言えるものを
噛みしめながら進むしかないように思われます.
新興宗教に騙されないためには、まず基本的な教えを
スッタニパータや、ダンマパダ、誰でも入手できる
岩波文庫の「ブッダのことば」や「真理のことば
感興のことば」などで、知っておくのがいいと
思います.基本の教えから逸脱していれば、
それは、仏教を奉じる団体ではない、と判断される
のが賢明です.
「ご利益があります」というエサに飛びつけば、
悪魔に釣りあげられてしまうかもしれません.
私たちはそういう魚にならないようにしましょう.
先ほど大乗仏教にはご利益があると説明したもの
ですから、ひとこと言い添えますと、そのご利益は
命がけで得られるものです.宝珠と引き換え
ですから.
つまり、基本的に競馬で大儲けするご利益はありません.
よその別嬪さんを抱くご利益はありません.
母ちゃんに追い出されますので.
当たり前のことがわからなくなるとき、人は騙されます.
ご利益とは大切な宝珠を奉納しても大丈夫だよ、という
メッセージのようなものです.仏道が正しい方向に
進んでいます、という磁石のようなものです.
けっして煩悩を助長させるものではないはずです.
ご利益は大乗仏教が担当します.
そのご利益とは、船の羅針盤だと思えばいいと思います.
船が寂光浄土に進むように取り付けられた羅針盤です.
そして、
そもそも大乗は「人助け」の宗教です.
困っている人を助けてあげて下さい.
そのためなら、観音様も千本のうち、
1つぐらい手を貸して下さるでしょう.