私は今、満67歳です.18年後というと85歳になって
いることになるのですが、きっとそんなに長生きはできません.
母は70歳で亡くなりました.それを思うと、きっと
今から18年後というと、死後の世界にいます.
とりあえず、まず、死んだら死出の山を歩くことになっています.
私は膝を痛めているので山道は歩けるかどうかわからない.
車いすがあればいいのですが.
さて、それは何とか行きましょう.次に初七日には三途の川
を渡るらしいのですが、忙しいことです.川辺におばあさんがいるらしいのですが、
このおばあさん、奪衣婆と言って、服を脱がせるのが専門らしい.
おいらもそこで雇ってほしい.若い女性専門で脱がせてあげたいなあ.
こんなこと言っているようでは、川は浅瀬は渡らせてもらえない
かもしれない.ピラニアがいて、悪人の足を噛むそうなのです.
おいらもそうとう悪いことをしてきたから、ピラニアに
いっぱい足を食われそうだ.向こう岸に着いたころには、
膝から下は骨だけになっているかもしれない.
そんなことを思うと、今から心を入れ替えて、ひと様のために生きておこう
と思うのであります.どうか五体満足のまま三途の川を渡らせて下さい.
三途の川のどこを渡るかは、おじいさんが決めるらしいです.
さっきの奪衣婆がおいらから脱がせた服を、そのおじいさんに
手渡すらしいのです.懸衣翁(けんねおう)という、そのおじいさんは
服を受け取ると、衣領樹(えりょうじゅ)という木の枝に
掛けるのだそうです.
それで生前の罪の重さを測るのだとか.
悪人の服は重たく、枝がぎゅーっと垂れ下がります.
それを見た、おじいさんも、さっきのおばあさんも
にたにた笑うのです.
「お前さん、生前は悪いことばかりしてきたようじゃの」
とおばあさん.
「お前は残念ながら、浅瀬は渡れない.そこの深瀬を渡りなさい.」
とおじいさんが言う.
「そんなこと言わないで浅瀬を行かせてくれよ、
ここはピラニアがいるんだから」
とおいらは懇願する.
「だめだ、あの世規定第125条により決められている.
かわいそうだけど、お前さんは、そこの膝上までつかる
深瀬を渡るのじゃ.」
「ああ、こんなことなら、もっといいことを
やっておくべきだった.」
これこそ後の祭り.今のうちに、ちょっとでも
何か人様のお役に立てることをしておきましょう.
☺
実はこの三途の川で試練が終わるのではありません.
死後には7日ごとに裁判があります.
49日まで合計7回の裁判を受けることになっています.
娑婆の裁判は三審制なので3回で決着がつくのですが、
冥途の裁判は7回受けます.
この裁判の最高裁判所に当たるのが35日に開かれる
閻魔大王の裁判になります.
どのぐらい恐ろしいか、それはたとえば、われわれがカエルだとしたら、
この閻魔大王はヘビです.
ヘビににらまれたカエルって見たことありますか?
カエルは本当に動けなくなってしまいます.
呪文に掛けられたように.
英語でいうと fascination.
これはみなさん、「魅了」でご存じの単語ですけど
実は「呪縛」という意味もあるのです.
まったく動けなくなること.
恐いですよ、閻魔さんににらまれると.
もう言い訳ができないのです.なぜなら、むこうは「玻璃の鏡」
を持っていて、それに、死者の生前の姿が映っているらしいのです.
うそをついても、すかさず閻魔さんはその鏡を見せつけます.
「これがお前さんの所業なのじゃよ.会計報告書を改ざんして
儲けたお金でおさわりバーで散財しているお前さんの姿が映っているよ.
もう観念して、等活地獄行きの汽車に乗りなさい.
言っておくが、これは旅行なんかじゃないぞ.座席はない.立ったままじゃよ.
じゃあ、行ってきな.ボンボワヤージュ!
あ~やめて!今からたくさん、いいことして生きていきます.
かんにんどっせ.
