ジュール叔父さん(12)

—————————————【12】——————————————

Je  me*¹  tenait*¹  à  gauche  de  ma  mère,  dont*²  mon  père
gardait  la  droite.   Et  je  me  rappelle*³   l'air  pompeux*⁴ de  
mes  pauvres*⁵  parents   dans  ces  promenades*⁶ du  dimanche,   
la  rigidité*⁷ de  leurs  traits*⁸,  la  sévérité*⁹  de  leur  allure*¹⁰.


 
——————————————(訳)———————————————

 私は母の左側に掴まっていた.その右側は父がキープしていた.
そして私は、日曜日のこうした散歩の中での哀れな両親のもったい
ぶった様子を覚えている.その顔立ちは厳しく、足どりも厳格だった
その様子を.

—————————————《語句》———————————————

*1) Je me tenait à gauche de ma mère./ 僕はお袋の左側を掴んでいた.
    se tenir à ~ ~につかまる、
       se tenir à la rampe  手すりにつかまる  
*2)  dont は関係代名詞.ただしde という前置詞が含まれているため、
   英語文法で習った関係副詞に似ている.ここでは de ma mère を
   ごそっと先行詞として受け付けている.  dont 以下は
     mon père gardait la droite.  と続いているが、この中の la droite に
   de ma mère が連絡しています.「父がその右側をキープしていた母」
   その母の左側に「私」がしがみついていた、と言っています.
*3)  je me rappelle  私は覚えている
    <se rappeler + 名詞  ~を覚えている、思い出す
    <se rappeler (de) + 不定詞  ~(するのを、したのを)
                                   覚えている、思い出す
        ❶~したのを思い出す、という場合、不定詞は複合不定詞
     avoir + 過去分詞とする.
     Je me rappelle avoir parlé avec lui.
   私は彼としゃべったことを覚えている.
    ❷~するのを覚えている、忘れない
  <比較> Rappelle-toi de me téléphoner dès que tu seras arrivé.
          着いたらすぐに忘れないで電話しなさいよ. 
 *4)  pompeux:(形) 大げさな、仰々しい、
     style pompeux もったいぶった文体
 *5)  pauvre (形)❶ (名詞の後) 貧しい、貧乏な、乏しい
        ❷ (名詞の前) 哀れな、かわいそうな、みじめな
 *6) promenade (f) 散歩
 *7)  rigidité [リジディテ] (f) (道徳的な) 厳しさ、厳格さ
 *8)  traits (pl)(m) 顔立ち、相貌
 *9)  sévérité (f) 厳しさ、厳格さ
*10)  allure (f) 歩きぶり、足どり
       déambuler d'une allure nonchalante
     のんびりとした足どりで散歩する


—————————————《文構造》———————————————

Je me rappelle l'air pompeux de mes  pauvres parents
dans ces promenades du dimanche, la rigidité de leurs  
traits, la sévérité de leur allure.
私は日曜日のこうした散歩での哀れな両親のもったいぶ
った様子を思い出す.その厳しい顔立ちと厳格な足どりを.

「その厳しい顔立ちと厳格な足どりを」.文末遊離にして
訳しましたが、文法的に正しく訳すと、
「私は日曜日のこうした散歩での厳しい顔立ち、厳格な
足どりの哀れな両親の仰々しい雰囲気を覚えている」
となって、かなり長文で分かりにくくなります.試験では
このほうが無難ですが、自由に訳してよいなら、やはり途中
でちょん切ったほうが、読みやすくていいと思います.
 参考までに第三書房版の訳をあげておきます.

「僕は今でも、日曜のこうした散歩時の、気の毒な両親たち
の飾り立てた様子、そのこわばった表情、そのしかつめらし
い歩きぶりが、思い出されるのだ」