仏教セミナー(3)

 

『真理のことば・感興のことば』を読みます.
きょうは、第1章 「ひと組ずつ」第5番を読みます.

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第5番: 実にこの世においては、怨みに報いるに怨みを以てしたならば、
     ついに怨みの息むことがない.怨みをすててこそ息む.これは
     永遠の真理である.

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1945年、日本が連合軍に無条件降伏したとき、その賠償責任について
アメリカが日本に言ったことは、アメリカは日本に対し、賠償金を求めない
として、このブッダの教えを引用しました.何がすごいと言って、アメリカ
はキリスト教の国でありながら、仏教の教えを引用したこと.

 

そしてこれはサンフランシスコ講話条約でセイロンのジャヤワルダナ氏によっ

て読み上げられた.日本が各国に対し賠償責任を免除された瞬間であった.

(もっともこれに胡坐をかくことなく日本は、中国、朝鮮に対してはしっかり

と賠償しましたし、東南アジア諸国にも経済援助は今なお続けております.)

 

 

「敵を討つ」ということも「怨みに報いるに怨みをもってする」行為です.
法然上人のお父様、漆間時国は、源定明と領土争いのさ中、定明に寝床を
襲われた.漆間の子、勢至丸がかけつけ、敵討ちを誓うと、父時国は息も
絶え絶えに言った.

 

「それは父の望むところではない.これは自らの業報である.そなたが、

仇討ちを成就しても、今度は定明の子がお前を討つであろう.私のこと

を思うてくれるなら、お前は出家して菩提を弔ってくれるがよい.」

 

というようなことを言ったとか.

 

このお父様のすごいのは、「自因自果」を悟ってられたことです.
自分に「寝首を掻かれる」ような罪障があったからだと言い切ったことで

す.
わかるはずもない過去世のことまで、言い及んで敵討ちをさせなかったと

いうのはやはり達人です.