【86】        
Tous les grands élèves s'étaient assis comme lui sur la
table,  à revers,  les pieds sur le banc,  ainsi que nous.
faisions dans les moments de grand répit et de réjouis-
sance.  
              ——訳——   
上級生たちはみんなモーヌと同じように、机の上に
腰掛け、足を椅子の背後からその上に乗せていました.
それは、私たちが長い休憩時間や、うれしことがある
ときに、よくするしぐさだった.  

               《語句》     
banc (m) 座席
à revers 背面から  revers (m) [ルヴェール] 裏、裏側
  prendre à revers   背面(側面)から攻撃する、
          搦手(からめて)から攻める        
banc (m)[バン] 腰掛、席、座席      
répit (m)[レピ] 猶予、休息
  laisser un moment de répit à qn / (人に) 一息つかせる
ainsi que ① ~のように、 ② 同様に      
réjouissance (f) [レジュイッサンス](集団的な)祝い、祝賀  
                       ② 喜び、歓喜


       ≪文法≫ 
Tous les grands élèves s'étaient assis comme lui sur la
table,   ここまで、大丈夫でしょうか? être + ppだから
大過去だなどと、あまり身構えないで、普通に
être + 形容詞 の半過去と考えましょう.assis [アシ] これは
形容詞で、「座っている」という意味です.発音は[アシ]
だけど座っているのでね. 

「上級生たちは全員、彼のするように机の上に腰掛けて
 いました.」

問題はそのあと.à revers, les pieds sur le banc,
これが、主語でもないし、目的語でもないし、補語でもない.
かといって、文修飾の副詞でもない.les pieds は名詞だけど、
名詞がポツンと一軒家.

そうなんですが、元は、本来は、何かがあったと考えます.
——どんなものが? 
——mettant les pieds 
——それで?
——Tous les grands élèves s'étaient assis mettant les pieds sur le banc
    上級生全員足を座席にのせて、座っていた.
——じゃ、なぜmettant が落ちたの?
——分詞構文の les pieds sur le banc の関係がくずれないから
  省略したのだと考えます.  英語では別主語表示の前置詞with
  を介して、現在分詞beingを省略するところです.
  きっとフランス語でも本来、avec などの主語指標があったと
  考えていいのではないでしょうか.

 

 

 【87の上】
Coffin, sa blouse relevée  et roulée autour de la ceinture,
embrassait la colonne de fer qui soutenait la poutre de la
classe et commençait de grimper en signe d'allégresse.
Mais  M. Seurel refroidit tout le monde en disant :

   « Allons !  Ce sera Mouchebœuf.»   
 
  Et chacun regagna sa place en silence.
             
                       
             ——訳——   
シャツのすそを引き上げ、それを腰に巻いたコファンは
教室の梁を支える鉄柱にしがみついていたが、よじ
登り始め、歓喜のゼスチャーをして見せた.
しかしスーレル先生は、こう言ってみんなを
落ち着かせた.

 「それじゃあ、ムッシュブフにしよう.」

それでみんなそれぞれ、黙って元の席に戻りました.


           《語句》
Coffin [コファン] 男子名   
relevé(e)(形)持ち上げられた、高くなった
 < relever (他)上げる、持ち上げる、まくり上げる                 
roulé(e)(形)  丸くなった
autour  ~の周りに   
ceinture (f) ベルト、帯   
embrassait (半過去) < embrasser (他)キスする、抱擁する      
colonne (f) 柱   
soutenait (半過去)(他) 支える   
poutre (f)[プートル](建築用語)梁、桁   
grimper {グランペ}(自) よじ登る、はい上がる
allégresse (f) 歓喜、歓呼     
refroidit (単純過去)<refroidir (他) ~を冷たくする
   refroidir du café コーヒーを冷やす-
 (人の熱意を)冷ます、(興味を)そぐ
 Son arrivée refroidit l'atmosphère.
  彼(女)が木て、座が白けた.  
regagna <regagner (他) ①取り戻す
   regagner del'argent 失ったかねを取り戻す
   ②戻る、再びたどり着く、帰る
      Chacun regagna sa place en silence.
       各人自分の席に黙って戻りました.
              

    ≪文法≫
今回も、分詞構文くずれの、カケラみたいなのが、
出てきました.
それがこの文.
Coffin, sa blouse relevée  et roulée autour de la ceinture,
embrassait la colonne de fer qui soutenait la poutre de la
classe et commençait de grimper en signe d'allégresse.

主語のCoffin(コッファン君)とその述語動詞embrassait
(抱きついていた)の間にそのカケラが挿入されていま
す.これがそのカケラ
 sa blouse relevée  et roulée autour de la ceinture,
直訳すると、引き揚げられて、腰の周りに巻かれた
彼のシャツ
となりますが、実は単なる、単語の羅列ではなく、
魂魄が入っています.述語、補語の関係が成り立って
います.「述補構造」とでもいうのでしょうか、

A「彼は(コッファン君は)自分のシャツ(の裾)を持ち上
 げて(たくし上げて)腰(ベルト)の周りに巻いて」

という血脈の通ったカケラです.  relevée もrouléeも
過去分詞なんだけど、隠れた主語(par Coffin)を想定
して、過去分詞relevée を能動的に訳します.

もう一度、はじめの文の骨格を見ますと、
B「コッファン君は教室の梁を支えている鉄柱に抱きつい
  ていたが、よじ登って歓喜のサインをしようとした.」
  
BにAを挿入して

「コッファン君は自分のシャツの裾たくし上げて腰の周りに
 巻いて、教室の梁を支えている鉄柱に抱きついていたが
 よじ登って歓喜のサインを送ろうとした.」

となります.
コファン君の名は棺桶を連想させないよう、コッファン君
にしたほうがいいかもしれません。