侍ジャパンがアメリカを下し、14年振りにWBCを制覇。
日本中が大きく熱狂した。
侍ジャパンが連日強豪国と熱い闘いを繰り広げているそんな時、
上西はというと、
「鼻水」と闘っていた。
かんでもかんでも、鼻水がヌートバーしてくるのだ。
時は遡ること、3月初旬。
数年ぶりに体調を崩して、週末はお布団と友達になっていた。
日頃の不摂生な自分の食生活などは棚上げして、「季節の変わり目のせいだ」と全責任を移ろい行く季節に転嫁していた。
少しずつ倦怠感も抜け、復調していったが、何故か鼻だけが治らなかった。
鼻水と鼻声、大谷くんに負けないくらいの二刀流である。
そのうち、鼻だけではなく、目もつーんとき始め、それにより頭もボーッとするようになってきた。
もはや自分が何刀流なのかもわからなくなっていた頃、テレビを眺めていたら花粉症の話題が取り上げられていた。
え、
いや、
まさか...な。
だって、この歳まで一度も花粉症になったことないんだぜ...
確かに、花粉症は突然来るって聞いたことあるよ。
でもこの俺様には来るはずないんだよ...。
嘘だ、嘘だ...。
ちっぽけなプライドからか、どうしても認めたくなかった。
しかし、鼻の辛さが目にまで及ぶのは初めてのことだったので、恐る恐る友人に話してみた。
上西「鼻が治らないんだけど、俺ってもしかして...花粉症なのかな?」
友人A「その名を口にしたってことは、つまり、そういうことだよ。」
ヴォルデモートかよ、とツッコミを入れつつ、花粉症で苦しんでいる友人たちにも話を聞いてみた。
上西「鼻が治らないんだけど、俺ってかふん..」
友人B「ようこそ、こちらの世界へ!!!」
上西「目も辛いんだけど、俺ってかふん...」
友人C「ようこそ、良い薬教えてあげるよ!!」
花粉症の皆様は、新規参入者に非常に寛容であった。それはもう恐ろしいほどに。
病院に行くこともおすすめされたが、まだ認める気にはならなかったので、とりあえず薬を買って様子を見てみることにした。
ドラッグストアに入り、店員さんに聞いてみる。
上西「あの、花粉症の、アレグランってあります?」
店員「アレジオンですね。こちらです。」
上西「あ、ありがとうございます...」
恥っっずぅぅうぅぅぅぅぅ!!
花粉症ニワカのくせに、CMでみたちょっとした記憶を使って、知ってる感出そうとしてしまった。
赤面しながら薬を手に取り、会計へと向かった。
「ピッ!」
店員さんがスキャンすると、画面には3938円と表示された
ええェぇヱ、たっけぇェぇゑぇ...
恥ずかしさのあまり急いで商品を取ってきたので値段なんて確認していなかった。
薬なんて、高くても2000円くらいだと高をくくっていたので、現金の持ち合わせでは足りなかった。
しかし、一度名前のミスで羞恥心を掻き立てられた俺には、やっぱり買うの辞めますなんて言えるはずもなく、しぶしぶ泣けなしの口座残高からPayPayにチャージをして支払いをした。
「ペイペイ〜♪♪♪(来月大変だね)」
支払い後の上機嫌なペイペイ音が、俺には違う言葉に聞こえた。
こんなことなら始めから病院にいってれば保険がきいたのに...。
自分史上最高額を鼻に課金した。
しかし出てくるのは激アツ星4キャラではなく、黄色い鼻水だけである。
震えながら開封して、薬を取り出す。
20錠入りだから、1錠約200円。
これでカップヌードル買えるよ...。
ごくん。。
200円の高級一口錠剤が、俺の食道を流れていった。
1時間もしないうちに徐々に症状が緩和されていった。
そのあまりの変化に、ようやく自分でも認めることができた。
上西「俺は...花粉症になったんだ。」
まるで自供する犯人のように、一度認めたら心はすーっと穏やかになっていった。
後日、10歳以上も上の尊敬する知人と話していたときである。
上西「俺、花粉症になってしまったみたいです。」
知人「おーそうか。遂に東京に染まったね。」
上西「え、もう上京して8年くらいになりますが、まだ染まってなかったんですかね?」
知人「うん、ここからがスタートだよ」
上西「......はい!」
上西はようやく都会に染まり始めたようだ。
ここから本当のシティーボーイへと上西は成長していく。
いつか、パツキンのチャンネーとザギンでシースーを食べにいくその日まで、この歩みを止めずに進んでいきたいと思う。
『微熱の病』無限鼻水編
ーーーーーーーーー完ーーーーーーーーー