敏腕スパイ 前回までのあらすじ


第二次大戦後の日本において闇市として発展した東京秋葉原。高度経済成長と共に多様な電子機器や部品(ハードウェア)およびソフトウェアを取り扱う店舗が立ち並ぶ世界有数の電気街へと発展。


世界各国のヲタクの聖地とも呼ばれるこの地に、2人の敏腕スパイが潜入調査のため入国した。

しかしそこで待っていたのは、


殺し屋でもマフィアでもなく、自分をネコと偽る圧倒的可愛さを誇る女性たち。


猫ちゃんたちの魅惑の絶対領域から、果たして敏腕スパイは脱出できるのか。


2人の運命と絶対領域をその目に焼き付けろ!!


(ブログを読むときは部屋を明るくして画面から離れてみてね)


スパイ達は完璧に浮かれていた。

注文してからというもの、自分がネコちゃんの如くジャレあっていた。

しかし、これはスパイとしての処世術。

洗脳されてるように見せかける一流だけに許された高度な技術だ。

決して楽しんでいるわけではニャイ。


まず最初に飲み物が届く。

毒が盛られているかもしれない。

スパイ2人が警戒していると

「何の絵を描きましょうか?」


メイドが悠長なことを言い出した。

毒入りの飲み物に絵を描くなど笑止千万。

すっかり呆れてしまった私は、こう答えた。

「アナ雪のオラフで。」


アナ雪の如く冷たい視線を隣のJが送っていた。

私はあの時何てことを言ってしまったのだろうか。

オラフと言えば、メイドさんがギュッーーと抱きしめてくれるとでも思ったのか?


「はーい♡じゃあ描いてみますね!」


当然抱きしめてくれるはずもなく、絵を描き始めたメイド。


「できました!ゴメンなさい、ちょっと失敗しちゃいました。」


何を言うか、とても良くできているではないか。こんなの美味しいに決まってる。

ストローに口を付けようとした私にJが目配せする。

Jよ、お前の考えはわかるが、オラフの絵が描いた飲み物に毒が入っているわけないではないか。私の心は温かい気持ちで、疑いの心などすっかり晴れていた。


慎重に、一口飲んでみる。

これは毒を警戒したわけではなく、あくまで絵を崩さないようにだ。


な!?この味は...

「うっ!う、うっ!!」


やっぱり毒か、という緊迫した顔のJに、私は小声でつぶやく


「うすい...。」


そして、ここで私は重大なことに気付く。


これはオラフぐちょぐちょに崩さないと、味しないやつだ。


あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。

私はこれほどまでに、藤原竜也ばりの声を出してまで悩んだことがあっただろうか。

ネコちゃんが描いた可愛いオラフをぐちょぐちょにすることなど出来るだろうか、いや出来ない(反語)

人生では、大きな選択を迫られる瞬間が突然来るという。


よし!!!!

薄いので我慢しよう。

私は幼少の頃から毎日厳しい訓練を受けてきた。これしきのことなど痛くも痒くもない。


薄い味にも慣れてきた頃、メイドがオムライスを持ってやってきた。

「オムライスは何を描きましょうか?」


私は少し悩んでから答えて、ネコちゃんが描いてくれるのを待っていた。この間の沈黙もまた一興。


「できましたにゃん!」



なんという完成度。

クレヨンしんちゃんが私に微笑みかけている。

私はスパイとして様々な所に潜入する仕事柄、「偏見」というものを出来る限り持たないようにしている。

しかし、一つだけ譲れない偏見がある。それは


『クレヨンしんちゃんが好きな女性に、悪い人はいない』


ということだ。

私は好みの女性のタイプを聞かれたら、クレヨンしんちゃんが好きな人と答えるようにしている(実話)


オムライスを食べ始めようとした私をネコちゃんが止める。

「待って!これからお料理に魔法をかけるニャン!」


魔法...だと?

君たちネコちゃんたちの可愛さで、既に私は魔法をかけられている。今更何を言うか。


「ご主人様も一緒に唱えてくださいね♡」


わ、私は魔法など使えないぞ!?

ましてや、一緒に魔法を唱えるとなると、より高度な技術がいるだろう。

しかし、一流スパイの私だ。出来るはずだ、自分を信じろ。


「せーの♡」



全員「萌え萌えキュン♡♡♡♡」



決まった。完璧に決まった。

私の僅かな波長のズレをメイドちゃんがカバーしてくれた。流石だ。


「これでとっても美味しくなりました♡」


ふふふ、そうだろう。ならないほうがおかしい。


「ただ、萌えは時間が経つと冷めちゃうのでお早めにお召し上がりくださいニャン♡」


萌えって、時間が経つと冷めるのか...

というか萌えという概念は、冷めるって表現を使うのか。

スパイとして世界各国を渡り歩いてきた私だが、まだまだ知らないことばかりだ。


萌え萌えのオムライスを食べ終え、今回のミッションの終わりが見えてきた。

しかし、店を出ようとしたスパイ2人にメイドネコちゃん達が最後の誘惑をしかけてきた。

「最後に私たちネコちゃんと一緒に写真が撮れるニャン」



ニャンだってぇぇえ!!


やったぁ!お願いしまっ...


すぐにでもOKしようとした私の口をJが抑える。

その行動で、すっかり浮かれきっていた私だがようやく冷静になれた。

そうだ、私たちスパイは記録に残ってはいけない。痕跡を残さず、秘密裏に潜入してこそ一流のスパイ。私は自分が情けなかった。流石は百戦錬磨のJだ。


私の口を押さえたJは、鋭い目をメイドたちに向けてこう言った。


「一緒に写真撮るネコちゃん、指名できますか?」



俺はあんたに一生ついて行くよ、J

この時固く決心した。

我ら生まれた時は違えども、死すべき時は同じと願わん (三国志より)



各々好きなネコちゃんと一緒に写真を撮って、店を後にした。

今回のミッションは、俺を飛躍的に成長させてくれた。スパイとして、人間として大きくなった、


大きな仕事をやり終えた私にJが言う。

「今のお前、良い顔してるよ」


これからも沢山のミッションが私を待っていることだろう。歩みを止めている暇はない。


敏腕スパイG、次は何処へ行くのだろうか?


~つづく~