「何だよ」
「抵抗しないジェボムヒョンなんて全然面白くないです」
そんな事、本当は思ってない
「それに……誰かさんのせいで怪我した唇にキスなんてしたくありません」
これは本心なのかもしれない
ヒョンはハッとしたように指で自分の唇に触れた
「ねぇ、ダメですよ このままじゃ。ヒョンだってホントは分かってるんでしょう?」
分かってよ、ヒョン
「大丈夫ですよ、ヨンジェは素直だから分かってくれます」
ジェボムヒョンの表情が少し変わる。少し、ほんの少しの表情の変化でも僕は分かるんだ
「どうしたんですか、ヒョン?」
問いかけると、ヒョンは少し口角を上げて言った
「……何もない」
久々に、ヒョンの笑った顔を見た気がした。僕はその笑顔が見れるだけで、十分だよ。ヒョンが幸せなだけで、もう十分。
「変なの」
そして打って変わってまた暗い表情になると、ヒョンは静かに言い放つ
「ジニョン……ごめん」
その言葉を聞いた瞬間にブワッと涙がこみ上げた。……なんでだろう?
涙を見られたくなくて、僕は咄嗟に立ち上がった。そして汗を拭ってるふりをして涙を拭った。こんなにも、ヒョンの事が好きなのに。
「何ですか急に? もうおかしくなっちゃったんですか?やめてくださいよそんな辛気臭いの……僕そういうの嫌いだから」
そうだよ、もうやめてよ。辛いだけだから。ヒョンの幸せは僕の幸せだけど、どっちみち辛いことに変わりはないのだから。
「僕、もうヒョンの事はフッきれてるんで 謝ったりしないでください」
ごめんなさい、これは嘘。でも謝られたらもっと苦しいから
「……」
すると、黙り込むジェボムヒョン
「だから、沈黙もこれからは無しですよ 今まで通りにしてください。っていうか僕、なんでヒョンなんか好きになっちゃったんだろう…?」
そんなの決まってる。ヒョンの事があまりにも大切で、愛しすぎたからだって
「女の子に会わなさすぎるから一時の気の迷いってやつかな?」
ううん、違う。ヒョンだから好きになったんだよ
でも もう、これ以上気まずくなりたくない。泣いたのがばれないように、眉間にしわを寄せたまま練習室を歩き回った。無理してるって、ばれてるかもしれないけど
「おい、ヒョン『なんか』は失礼だろ」
でも、そのテンションに合わせてくれるヒョン。やっぱりヒョンは、そのままが一番だよ
「怒らないでくださいよ~」
ヒョンの頭を小突くと、ヒョンは白い歯を見せて笑った。いつ振りだろう、こんなにヒョンが笑ってる姿を見たのは
でもこの気持ちを止めることなんて、できないみたいだ。僕、好きだよ、ヒョンが。
誰にも負けないぐらい、好きだよ。大好きだ
「さ、練習が終わったら作戦会議でもしましょう」
でも僕のやるべき事はまだ終わっていない。そう、ヨンジェとヒョンを仲直りさせなくちゃいけない
「何のだよ」
「ヨンジェとヒョンが仲直りするための」
「……」
ヒョンは一気に黙り込み、表情を暗くしたまま俯いた。きっと戻れないって思ってるんだろうな。そんな事、絶対ない事なのに。ヨンジェも、ヒョンの事が好きなはずなのに
「ヒョンがヨンジェを好きなこと知ってるのは、僕だけなんですから。協力できるのも僕だけですよ? そういう時は人を頼らないと」
僕はヒョンのために、良いメンバーでいることを選んだ。付き合っているわけでもない、恋愛感情を持っているわけでもない。でも、一番近い存在。そうなりたいと強く思った。
「ありがとな」
少し眉毛を下げて、ジェボムヒョンは微笑んだ。その顔を見ただけで、胸がぎゅっと締め付けられた