そこからの記憶はあまり覚えていないが、
目が覚めた時には見知らぬ少年が目の前にいた
「すみません、勝手に家に上げちゃって……冷えてるでしょう?温かい紅茶入れましたから、飲んでください」
その少年は俺をソファーまで案内すると、目の前にティーカップを出した
サラッとした茶髪の髪の毛に少し小さい目。きっと高校生ぐらいの年齢だろう。こんなに怪しい俺を家に上げるなんて相当なお人よしなんだろうな
「……ありがとう 君は?」
「あ、言うの忘れてましたね、僕ヨンジェって言います。大学生になりたてなんです!」
えっへん、と言う言葉が出てきそうなぐらいの言い方だ。このヨンジェという少年は、「疑い」という言葉をきっと知らないのだろう
「君、人を疑ったことある?」
「ないです」
即答する彼
「少しは人を疑った方がいいよ……それじゃあね」
俺は彼に用もないし、自分の家に帰るためにその場を立った。すると彼は慌てるように俺の前に立つ。
「ちょ、ちょっと待ってください!そんな体で外に出たらいけませんよ。今日は泊まっていってください!」
あまりにもその目が真剣で断るにも断りきれなかったから、渋々了承することにした
ここからだった
俺とヨンジェの奇妙な共同生活が始まったのは
「おはようございます、ヒョン」
次の日 目が覚めると、また目の前にはヨンジェがいて、俺の顔を窺うように首を少し傾げた。不思議な奴だ。年齢も名前も、何も言ってないんだけどな
「ヒョンって……」
ベットから起き上がり、質問をしようとするとすぐに返ってくる答え
「あぁ、僕よりも年上みたいだったから、ヒョンって呼ぶことにしたんです」
えへへ、と笑って少し舌をだし
「あ、ダメ……でしたか?」
と、少し眉毛を下げて聞いてくるヨンジェ。……コイツ、何なんだよ一体。俺を気遣って何になる? 何の利益があるんだ?
「別に、好きに呼んで」
面倒くさいし、まだ眠いから流すことにしておこう
「やった!」
ヨンジェはその場で小さくガッツポーズをとった。……ますます意味の分からない奴
「あ、朝食、できてますから 一緒に食べましょう!」
「いや、俺 朝は食べない……」
「いいから いいから」
ヨンジェは半ば強引に俺の手を引いてリビングに向かった。握られた手は、今まで一度も感じたことが無いくらいに温かかった
昨日はよく見ていなくて気づかなかったが、この家はけっこう広い。若干記憶が無くなっているのもあって、此処がマンションなのか、それとも一軒家なのかもわからないのだが。しかし、こんなに広い家に大学生が一人で住んでいるなんて……
「ここ、お爺ちゃんの家だったんです。でも引っ越すからもういらないって言われて……売るのは勿体ないから僕が住むことにしたんです」
ヨンジェは俺が部屋をじろじろ見ているからか、こう話した。ヨンジェはいつでも俺の目をじーっと見つめながら話す。そんなに見つめられても、俺は何もしないのに
「あー、じゃあ食べましょう? いただきまーす」
ヨンジェは大学生だというのに、小学生ぐらいに見える。そう思うのは俺だけなのだろうか?
「……いただきます」
とりあえずご飯を食べてみるが、案外うまくてびっくりした