朝食を食べ終えると、ヨンジェは何やらリビングと他の部屋を行ったり来たり。いつの間にかヨンジェのリュックはもう はち切れそうだ。
「あ、僕今から大学行ってきますね」
俺の視線に気づいたのか、ヨンジェは笑顔で言った。その間に、この家を出ればいいか
「それと、今日は2限しかないのですぐに帰ってきます。僕が大学に行ってる間にお風呂入っててください。着替えは僕の服しかないから少し小さいかもしれないけど……。ちゃんと用意しているので」
「いや、俺……」
「あ!絶対に家から出ないでくださいね!まだ体も休まってないんですから 絶対ですよ!約束!」
俺の心の中が分かるのか、ペラペラと言葉を放っていくヨンジェ。そして俺が俯くと、無理矢理 小指を俺の小指と絡め、ぐっと握った後に親指を合わせた
「約束、もうしちゃったんですから守ってくださいね。それじゃあ」
ヨンジェは俺が反論する隙も与えずに玄関へ向かう。せっかく家を出ようと思っていたのに……いや、出ようと思えば出れるじゃないか
でも何故かあの純粋な目をしたヨンジェの事を考えると、約束を守らないといけないような気がして、今は家を出ることを断念し、言われたとおり風呂に入ることにした
洗面所には綺麗に畳まれたスウェットが置いてあって、隣にはバスタオルが置いてある。
……ほんと意味わかんねぇ。見知らぬ怪しい男に、何でここまでするんだろう……?
風呂から上がり、スウェットを自分の体に合わせてみる。……これ、明らか入んねえだろ。でも何も着ないのもいけないよな……
とりあえずスウェットパンツだけを履き、タオルを首に巻いて風呂を出た。どこで何をしたらいいのか分からず、とりあえずリビングのソファーに座りテレビをつけてみた。普段見ていないからか、全然知らない芸能人らしき人ばかりが出ている。……面白くないな。ブチっとテレビを消し、ボーっとしたまま時間が過ぎるのを待った
ガチャリ、とドアを開ける音が聞こえた
「ただいま!……ってヒョン!?」
何か焦っているようにヨンジェは言った
「ちょ、何か着てくださいよ!ほら、ちゃんと買ってきたんですから!」
ヨンジェはこっちには目もくれずポンポンと服を投げてくる。男同士なのに、何が問題なんだよ
「わかったから、投げるな」
俺は放り投げられた、タグがついたままのスウェットを着た。丁度いいぐらいのサイズだ
「いや、服とかわざわざ買ってこなくても……」
「罰として、宿題を教えてください!」
なんなんだ、コイツ。毎回俺が話そうとする度に遮ってくるし、それなのに気遣いだけはできるし。……意味わかんねぇ
俺はヨンジェに手を無理矢理引かれ、自分の部屋らしき、机がある場所に連れて行かされた。
「これ、ここ!」
ヨンジェは指差したのは意味の分からない数式が並んでいる問題。こんなの解けるわけない
「無理」
「教えてくださいよ……」
そんな泣きそうな顔で見つめられたら断るにも断りきれないだろ。はぁ、とため息をつき 俺はシャープペンシルを持った。
すると何故かその問題が頭にスッと入ってきて、俺はシャープペンシルを走らせだした。自分でもよくわからない、ただ感覚で解いていっている。
いつの間にか答えは出ていて
「……すごい」
隣でヨンジェは感嘆の声を上げていた。
この問題を見た瞬間に、何故か昔の感覚が甦った。なんなんだ、この感覚は
「これからも、宿題教えてくださいね」
返事なんてしていないのに、ヨンジェは満面に笑顔を浮かべて言ったのだった