次の日も、また次の日も。いつになってもヨンジェは大学にいる時以外、俺の側から離れようとしなかった。でも、不思議とそれを不快に感じることは無かった
「なぁ、ヨンジェ」
「やっとヒョンから話しかけてくれましたね!」
話をまた遮られたが、俺は話を続けた。
ヨンジェは目をキラキラと輝かせている。
「何か、聞かないのか?」
ヨンジェが俺に質問してきたことは、一度もない。それにヨンジェが俺の事をずっと「ヒョン」と呼んでいる理由は、俺の名前を知らないからだろう。普通だったらこんな怪しいヤツ、家にも入れないだろうに
「……ヒョンから話しかけてくれるまで待ちます」
ヨンジェは少し笑って俯いた
「誰だって話したくないことはあるでしょう?」
犯罪者の俺にヨンジェの存在は眩しすぎた。純粋なその瞳に俺なんか映さないほうがいいのに
「僕にだって……話したくないことの一つや二つはありますから……」
その時のヨンジェの目は今までに見たことが無いくらいに光を失っていて、見ているこっちが苦しくなった
きっとヨンジェは過去に何かあったのだろう。でもそれを聞ける資格なんて俺には無い。それに、深入りすればするほど、この家を離れにくくなる
。それを分かっていたから、俺はヨンジェと一線を引いたまま毎日を過ごした。
けど、その一線をアイツは越えてきた
「ヒョン、ここ教えてください」
「ヒョン、一緒にご飯食べましょう」
「ヒョン、一緒に……」
「ヒョン……」
こんなに心が綺麗な人間は、初めてだった。
と、いうよりも俺の記憶に残っている人間といったら警察と……
死別した―――ぐらいだが
俺と関わっていたら、ヨンジェまでが汚れてしまう。分かっているのに、どうも離れられなくなっている自分もいて、ヨンジェとの生活を楽しんでいる自分がいた
「ヒョン、今日洋服買いに行きたいんですけど、一緒に来てくれませんか?」
「ごめん、行けない」
でも、俺はいつだろうと外に出る事だけは拒んだ。それは追われている身だからだ
そんな俺でも、ヨンジェは受け入れてくれて
「ヒョン、今日DVDレンタルしてきましたから、一緒に見ましょうよ」
いつでも俺の事を考えてくれた。
観たい映画があったら、家で見ればいい。
したいことがあったら、家でやればいい。
そう言って