机とイスしか置かれていない殺風景な部屋。そして壁一面は真っ白だ。まるで彼の心を映し出しているかのように
また今日も、か。ヨンジェはその部屋からどうにかして逃げようとしている。俺はヨンジェがいる部屋に向かい、ガチャリとドアを開けた
「ヨンジェ……ちゃんとこの部屋で大人しくしとけって言っただろ?」
俺が入ってきたと同時にビクッと反応するヨンジェ。お前がどんな行動をしてるのかなんて、全部俺は分かってるのに
「ヒョン……こんなの間違……」
「……間違い? ヨンジェ お前は俺を選んだ、違うか?『お前』が、『俺』を選んだんだ」
ヨンジェが目に涙をためながら、俺に必死に訴えかけてくる姿を見ると、自然と笑みがこぼれる
「違う、ヒョンはこんな人じゃなかった……」
ヨンジェは俺の手首を掴んで言った
もう目から涙が溢れそうだ
「……やめろ。これ以上無駄な抵抗するんだったら、次は手錠だかんな」
俺はその掴まれたヨンジェの手を振り払う
そしてヨンジェを見下ろした
「……ヒョンのバカ」
部屋のドアを閉め鍵をかけるとき微かに聞こえた
――何年前だっただろうか
「ヨンジェ、本当にいいのか?」
「はい、後悔はしません。僕は……ずっとヒョンについて行きます」
俺は罪を犯して警察に追われる身となっていた。でも、正直自分が何の罪を犯したのかは分からない。覚えて、ないんだ。
人を殺したのか、それとも強盗をしたのか、それとも……何だろう。とにかく、俺には何もわからなかった。たった一つその時に分かっていたのは、自分が犯罪を犯した、という事だけ。
毎日毎日誰かに追われていいる感覚があって、いつでも俺は、その誰かから逃げるように生活を送っていた
住む場所も転々としていた俺だったが、ある人と出会ってから、そこに長い間住むことにしたのだ。
その『ある人』がヨンジェだった
俺はある日、傘も持たないまま、ただただ道を歩いていた。軽い記憶障害があるのか、物忘れが激しいだけなのか、はたまた家を転々とし過ぎているからか。自分の帰る道がどこなのか、よく分からなくなることがあった
雨のせいで体が冷たくなっている事にも気づかずに、ただただ歩いた。髪の毛はベッタリと顔に張り付き、服も体にベッタリと張り付く。その時の俺は生きているのに死んでいるようだったに違いない。
足元がガクリ、と曲がった時。周りには雨が降っているのに、俺の頭上にだけ雨が降らなくなっていたのだ。