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「ジニョン君、今日もご苦労だった」
「ありがとうございます」
「これからも君の活躍に期待してるぞ」
「はい」
敬礼をしたまま、副総監に頭を下げる。まだ仕事が、僕には残っている
「あいつ、ちょっと仕事ができるからって調子のってるよな」
同期の悪口なんて、どうでもいい
「ほんとカッコいいよねー」
女の黄色い声なんていらない。僕はただ、一つの事件を知りたくて警察になり、ここまで上り詰めた。……ジェボム、今どこにいる?
―――
それからの事、まだ俺たちはお互いの事をよく知らないまま共同生活を送っていたが、ある時 事は起こった
「ねぇヒョン?今日着ていく服、どれがいいと思いますか?」
俺がソファーに座ってテレビを見ているとき、ヨンジェはテレビを遮る様に突っ立った。ヨンジェは黒のジャケットを羽織るか、ベージュのジャケットを羽織るか迷っているらしい。
「ベージュ」
「やっぱりですか?僕もそう思ってました!」
じゃあ聞くなよ、というツッコみを入れる隙もあたえず、ヨンジェはスキップで自分の部屋に戻って行く。そしてベージュのジャケットを着て、俺のもとへ来たときに聞こえた
「ウーウー」
サイレンの、音
「う、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
止めろ、止めてくれ
誰か俺を、止めてくれ
気づいたときにはもう遅かった
テレビにはいくつものヒビが入り、液晶画面の破片が辺りに散らばっていて、リモコンは原形をとどめないほどに変形している
「ヒョン……?」
ヨンジェは泣きそうな顔で俺を見つめる。頬には切り傷があり、そこからツゥっと血が流れていく。そんなお前すら、愛おしいよ
「ヨンジェ……」
その血を、俺はゆっくりと舌ですくい取っていく
「ヒョ、ン?」
「全部、俺のにしたい」
床に座り込んでいたヨンジェをそのまま押し倒し、抵抗する腕を押さえつけた
「ダメっ、ヒョン……」
傷口を舌でなぞりあげ、唇に視線を落とした。綺麗な色をしたその唇に、ゆっくりと触れる。柔らかいその唇の感触を、自分の感覚に焼き付けさせる。何度も、何度も……
「ヒョン!」
ドン、と肩を押されたときに、我に返った。事の重さに気づいたのは、その後だった。
「ヨンジェ……?」
俺は、そこで本性を出してしまったのだ
それからの事、俺はヨンジェとあまり会話をしなくなった。でも、あれだけ酷い事をしたのにヨンジェは今まで通りに接してくるのだ
「ヒョン、今日大学で……」
「ヒョン、今日のご飯は……」
「ヒョン、朝は……」
心が、痛い
それからも俺は、サイレンを聞く度に暴れ、ヨンジェに傷を負わせ、物を壊すことを繰り返した。なのにアイツは大丈夫だと言って、また無理に笑顔を作るのだ。