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中学生のころ、僕は一人でいることが多かった。そんな中、唯一話しかけてくれていた人がジェボムだった
「何の本読んでるんだ?」
「え、これ?これは……」
「へーそうなんだ、面白そうじゃん。今度俺に貸してくれない?」
僕は昔から本が大好きだった。友達がいなかったわけじゃないけど、学区外だった中学校に転入してきたから、その学校に友達は一人もいなかった
彼は明るくて人気者で、非の打ち所がない人間だった。初めのころ、僕には眩しすぎて、自分から話しかけられることを拒否していたこともあった。でもそんな僕にも、ずっと話しかけ続けてくれた
いつの間にか僕たちは「親友」と呼べるほど仲が良くなっていた。僕の事は、何でもジェボムに話したし、ジェボムも僕には何でも話してくれてたと思う
そんな人懐っこくて明るい彼が豹変したのは中学2年生の終り頃だった。
「なぁ、ジニョン?」
「何、ジェボム」
その日は、明らかにいつもと雰囲気が違った。何かあったことは分かっていた。でも無理矢理聞くのもいけないと思って、ジェボムから話してくれるのを待っていた。
ジェボムとほぼ会話を交わさないまま放課後になった。いつの間にか2人のたまり場となっていた公園に、今日も寄ることにした。ゆっくりとした足取りでベンチへと向かい、2人でベンチに座る。
するとジェボムは視線を足元に落としたまま
「弟が、いなくなった」
顔を青白く染め、消え入りそうな声で呟いた。肩は小刻みに震え、今にも消えてしまうそうだ。弟がいなくなった?そんな馬鹿な、と最初は思った
「俺の、せいでなんだって。俺、犯罪を犯したんだって。だから、戻ってこないんだって」
あまりにも真剣にそう言って来るから嘘ではない気がしたが、ジェボムが犯罪?そんなこと考えられるはずが無かった。
「犯罪?そんな事ジェボムがするわけないじゃん」
「いや、俺はきっと……あぁ」
ジェボムは頭を抱え、手で顔全体を覆った
「俺、よく授業とかでも忘れ物とかしてたろ?」
急になにを言い出すかと思えばそんな事。
「うん」
「あれ、ただの忘れものじゃないんだ……俺本当は、記憶障害があるらしいんだ」
初めて聞いた、彼の告白。今まで何でも話してくれていたはずの僕にさえ隠していた秘密。
「今まで……」
何でも話し合ってきたはずなのに
「ごめん、何も言わなくて」
この時初めて彼の闇を見た気がした。いつも明るくて、面白くて、眩しい姿とはかけ離れたジェボム。僕はその言葉にどう返すべきなのか、答えが見つからなかった
「だからきっと、俺の良いように記憶が消えてるんだ。俺は……何の犯罪を犯した?」
ジェボムは自分の後頭部の髪を掴み、クシャクシャと掻きむしった
「自分でも分かんないんだ」
その日から、ジェボムが学校に来ることは無くなった。僕は先生に何度も聞いた
「ジェボムはどこに行ったんですか?」
でも、いつだって先生が言う言葉は同じ
「知らなくていい事もあるんだよ」
そんなキレイごとなんて要らない。僕はただ真実が知りたい ジェボムを救いたい。ただその一心で、僕は警察になることを決めたのだ
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