「ジェボムヒョン、こんなの間違ってます」
自分でも分かってる、俺がおかしいことぐらい。でもお前を外に出すことなんてできないんだよ
「ヒョン」
その悲しげな声すら愛おしいよ
「ごめんな」
俺はドアを閉めて鍵をかけた。もうこうするしかないんだよ。
ドン、ドン、ドン、ドン……
途切れず叩かれるドア
ジェボムヒョン、ヒョン、ヒョン……
途切れず呼びかけられる俺の名前
分かってくれ、ヨンジェ。
俺には自分に母が居るのかがわからない。それに、父はどこにいるのかすら分からない。弟はもうこの世にいない。友達なんていたのかすら分からない。大事なものなんてすべて失った。
もう、俺にはヨンジェしかいないんだ。やっとできた大切な人。もうお前を失いたくないんだ
でも外に出しておけば、俺が死んでしまう。ヨンジェが俺の前からいなくなるなんて、死んだも同然だ。それに、またお前に傷を負わせて、痣をつけてしまう。だからお前を閉じ込めておくしか、手段がないんだよ
白い薔薇を買った時ジャクソンに言われていた言葉。「折らさないように気を付けてください」その白い薔薇は呆気なく折れてしまっていた
外に出られないせいか、いつの間にかヨンジェの頬はげっそりとこけていて、健康的だった体型も、痩せ型に変わっていた。
「ヒョン、お願いだから花を買ってください」
ある日突然ヨンジェは俺にそう言った
「お願いです。」
殺風景な白い部屋に、飽きてしまったのか何なのかは分からないが、ヨンジェがそう望むなら、買ってきてやろうと思った。
「いいけど、この部屋から出ようとするなよ?出たらどうなるか分かるよな?」
「わかってます」
俺はソファーに脱ぎ捨てられていたパーカーを着て外に出た。いつの間にか季節は変わっていて、パーカーでは少し暑いぐらいだ。
花屋につき、俺はドアを開けた。今日もいつか見たことのある先客がいた。
「あ……ジェボムさん」
ジェクソンは複雑そうな顔で俺の名を口にした。無理もない。ヨンジェが急にバイトを辞めたのだから。
俺はジャクソンと会話を交わさず、近くにあった紫の花を手に取った。なかなか俺は綺麗な花だ。花の名前は分からないが、これにしておこう。ヨンジェの笑顔が久しぶりに見れるのなら、それだけで良かった。
早速レジに向かい、会計を済ませる。ジャクソンが俺にヨンジェの事を聞いてくることは無かった。
「ありがとうございました」
俺は少しジャクソンに会釈をして店を出る。
その後ジャクソンが
「悲しんでいるときのあなたが好き……」
そんなことを言っているなんて知りもしなかった。