気づけば一学期も終わり、夏休みに入った。
ユギョムはいつもの様に家に帰って夏休みを過ごすのだが、マークは違った。マークは寮に住んでいるのだ。
正直言ってマークは家にいるより寮に居る方が好きだった。流石金持ち校なだけあって設備も整っているし、家にいるよりはずっとマシだ。
ジャクソンは家に居ても暇だから、という理由で寮に住んでいる。マークにとってジャクソンは一番の親友でもあり、ルームメイトなのだ。
「なんだ?今日もユギョムか!」
「うるさい」
慣れた手つきでユギョムに返信するマーク。机に頬杖をついて、ただスマートフォンを操作しているだけでも様になるとは。ジャクソンは少し冷静に感心してしまう。
送信ボタンを押した後、ふぅ、と一息つき、スマートフォンを机に置く。そしてバイブが鳴るとまたすぐに手に取る。その繰り返しだ。
もどかしくなったジャクソンは乱暴に言い放つ。
「そんなに会いたいなら会えばいいだろ?ったくお前らしくないな」
別に会いたいからずっとやり取りしてるわけじゃないんだけど、とマークは心の中で返答する。しかし、会いたいという気持ちは少なからずマークの中にあった。
特に何の予定もない長期休暇。
どうせなら遊びまくった方が楽しいかもな。
そう思ったマークはユギョムにまた新しいメッセージを送る。
『今度一緒にどっか行こうよ』
するとすぐにつく既読の二文字。しかし一向に返って来ない返事。どうすることもできず、そのまま静止する。たったの何分かしか経っていないはずなのに、長く感じられる時間。
「お前、どうしたんだよ。最近変だなぁ」
ジャクソンは呆れたようにマークの頭をこつんと叩いた。ジャクソンの方を軽くにらむと、怒ってやんの~とケラケラ笑い出す。最初は少し不機嫌だったが、何だか楽しそうなジャクソンを見ていると、そんなものはどうでもよくなってしまった。
マークは何だかんだジャクソンに甘い。
『ごめんなさい、本当はとても行きたいんですが親にダメだと言われました…本当にごめんなさい』
いつの間にか敬語に戻っている文。
そして断られたという事実にマークは落胆した。相当わかりやすかったのか、ジャクソンはそっとマークの肩を叩いた。
『本当は自由に色んな人と遊んだりしてみたいんですけど、なかなか許してもらえないんです…』
あぁ、どうにかしてユギョムに普通の高校生がしているようなことをさせてあげたい。
マークはそう思った。
それならこれしかないじゃないか。
『ユギョム、俺と一緒に作戦会議だ』
マークはスマホをおいて、にやりと笑った。